元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ロマンス」

2008-05-15 06:32:47 | 映画の感想(ら行)
 96年作品。地方公務員の安西(ラサール石井)はある日大学時代の友人で不動産事業に野心を燃やす柴田(玉置浩二)と再会。久々に飲み明かす二人は行きつけのバーで霧子(水島かおり)という奔放な女と知り合う。意気投合する3人はまるでティーンエイジャーのように楽しい日々を送るが、すでに若くない彼らは次第に周囲のしがらみにからめ取られていく・・・・。監督は「ナースコール」や「誘惑者」の長崎俊一。

 青春の燃えカスを拾い集め、必死に明るく盛り上がろうとする30代の男女の面白うてやがて悲しき顛末を描くこの作品。監督(当時39歳)の心情を反映した映画であることは間違いが、どうものめりこめなかった(私自身も監督のトシまではいかないまでも、これを観たときはいちおう30代だったのだが)。

 まず第一に、こんな女は嫌いだ。歯科医の夫(内藤剛志)がいながらフラフラと他の男と遊び回り、情緒不安定でしょっちゅう行方をくらまし、行動も一貫性がなく人の都合なんて考えず周囲を混乱に陥れるエキセントリックなキャラクターは、多少顔がきれいでも絶対にお友だちになりたくない。ではなぜ映画はこうも思い入れたっぷりに彼女を追うのか。ズバリ、監督の“オレの女房ってカワイイだろ。いいだろ(水島は監督夫人である)”という下心が無意識に画面にあらわれているからだ(出たぞ、極論 ^^;)。

 第二に、この3人の関係は柴田が大金持ちだという設定がなければ成り立たないことだ。霧子のために別荘に案内し、高原の土地を買ってやり、ビルも買い占める。安西にも高そうなキャバレーで接待し、ホテトル嬢も世話してやる。こうでもしないと“友情”がつなぎ止められない、とでも言わんばかりだ。まぁ、そう思うのは個人の自由だが、こういう奴とも知り合いにはなりたくないね。

 第三に、安西のキャラクターがイマイチ不明確な点だ。石井の演技力不足もあるけど、公務員で趣味に小説書いて、気楽な一人暮らしだが、どういう生活信条を持っているのか全然わからない。単なる狂言廻しにしては画面に出ている時間も多いしね。そして何より、30歳過ぎてまでティーンエイジャーのごとく能天気に遊びたいという主人公たちにはついていけないってこと。無邪気であるより大人でありたい。少なくとも私はそう思う。

 作劇面ではドキュメンタリーのように“引いた”タッチがリアルで興味深く、玉置のアクの強い怪演が活きていたが、中盤以降になると少々飽きてきた。ラストの処理などいかにも思わせぶりだが、私はそれ以後の主人公たちの歩みを見てみたい。真に等身大でリアルな物語が展開する可能性が高いと思うからだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする