元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「紀元前1万年」

2008-05-05 06:50:41 | 映画の感想(か行)

 (原題:10,000 B.C. )さすがローランド・エメリッヒ監督。大味で脳天気な仕事ぶりは健在だ(爆)。もっとも、出来がどうのこうのと言うより、こんな企画が通ってしまうハリウッドのビジネス現場に対して失笑を禁じ得ないが・・・・。

 題名通り、紀元前一万年のアフリカ(?)を舞台にしたアドベンチャー。たぶん製作側は、強権的な専制君主に対抗する民衆といったモチーフで、昨今のアメリカ映画でトレンドになっている国際情勢ネタに通じるテイストにより、多額の製作費を投入する気になったのだろうと思うが、もうちょっと監督と脚本家の人選をしっかりやって欲しかった。

 しかも、時代考証はデタラメ三昧。エジプトのピラミッドが建てられたのは紀元前2500年あたりだと思うのだが、本作ではすで紀元前一万年にして超大規模なピラミッドが沙漠の真ん中で建造中である。当然人力だけでは無理があるから、ここでは何とマンモスを荷役として採用(大笑)。従業員は周囲の村々から強制徴用された奴隷ばかり。

 そもそもピラミッドは独裁者が自分の楽しみだけのために作らせたシロモノではなく、立派な公共事業(マクロ経済政策)であったらしいことが言われているが、もちろん本作ではそのような殊勝なアプローチは皆無だ。まあ、どうせフィクションなので紀元前一万年に大手ゼネコンみたいな建築のノウハウを持つ一派がいてもかまわない。でも、それならそれで上手にホラを吹いてもらいたいものだ。

 かような立派な文明が存在しているのならば、近隣諸国にも少なからず波及していると思うのだが、主人公達の住む村も、彼らと仲良くなる集落の連中も、未開人と同様の生活を送っているあたりは脱力してしまう。悪逆の王を倒して故郷に帰る主人公達は、何も文明の利器をもたらさない。せいぜいが穀物の種ぐらいだが、厳しい自然の元では役に立たない。あの環境ならば遊牧程度のことしかできないだろう。いつもの通り、この監督の作品には突っ込みどころが満載だ。

 主人公役のスティーヴン・ストレイト、ヒロインのカミーラ・ベル、いずれも魅力無し。脇のキャラクターも、ほとんど印象に残らない。対してSFXは上出来だ。特にマンモスやサーベルタイガーの造型は見事。アクション場面も悪くない。いい加減な終盤の展開には閉口するものの、あまり深く考えないでボーッとスクリーンを眺めたい向きにはいいかもしれない。
コメント
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