(原題:The Invasion)結局、印象に残ったのはニコール・キッドマンの下着姿だけだったりする(爆)。ジャック・フィニイによる古典的SF「盗まれた街」の4度目の映画化。そのうち私が見たのは2回目の映画化(78年)だけだが、それと比べても随分と落ちる出来映えだ。
まずエイリアンをウィルスにしたのが大間違い。これならどんなにタチが悪かろうともしょせん病原体の一種でしかなく、ワクチンの開発によって駆逐することも出来よう。だいたい、どんな環境にも耐えられる生命体ならば、人間の身体に入り込む必要はないではないか。これでは侵略の理由も分からない。人間そっくりのレプリカを作って入れ替わる(なお、入れ替わられた者は消滅)という前の映画化の手口の方がよっぽど凶悪でインパクトが強かった。
ただし作者はSFホラーとしてのスキームよりも、ウイルス感染による人間の“均質化”により戦争が減少するなど、闘争本能と平和との関連性といった重いテーマを提示することに御執心のようだ。このあたりが「ヒトラー 最後の12日間」のオリバー・ヒルシュビーゲル監督の個性が出ていると、言えなくもない。しかし、これが実に表面的で取って付けたようなモチーフなのは脱力する。
何でもエンタテインメント指向のプロデューサーであるジョエル・シルバーとヒルシュピーゲル監督との意見が合わなくなり、結局は別の監督が一部を撮り直したらしい。終盤に展開する間に合わせ的なカーアクション場面が当該部分ではないかと思うが、作劇のバランスを崩しただけで何の効果もあげていないのにはガックリである。
キッドマンは前述の下着シーンだけでなく、身体の線をキッチリ出したような衣装ばかりを身につけ、何とか冗長なストーリーを保たせようとしてるが、それにも限界がある(笑)。ダニエル・クレイグやジェレミー・ノーサムなど、脇のキャストも気合いが入っていない。良かったのがライナー・クラウスマンのカメラによる寒色系の画調のみとは、鑑賞したのを後悔するようなシャシンである。
なお、最初に感染する政府高官の名前が“カウフマン”なのは、78年の映画化「SF/ボディ・スナッチャー」の監督フィリップ・カウフマンを意識しているのではと、勝手なことを思ってしまった(^^;)。