元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その10)。

2007-09-01 08:00:19 | 音楽ネタ
 最近購入したCDを紹介します。まず、オーストリアのジャズピアニストVolkhard Iglseder率いるピアノトリオ、TRIOTONIC (トリオトニック)のアルバム「HOMECOMING」。


 オリジナル曲中心のラインナップだ。ヨーロピアン・ジャズ・トリオに代表されるような欧州系(ムード音楽系?)のまったりしたジャズとは一線を画し、さりとてドイツのECMレーベルの諸作品のような高踏的な展開とも違う、もちろん本場米国のファンキージャズとも異なる。叙情的だが、センチメンタリズムには溺れない。透徹した文芸アート色をうかがわせるストイックなタッチながら、エンタテインメント方面にしっかりと踏み止まっている。とにかく、クールかつ甘美なメロディを強力なビートに乗せてグイグイと聴き手に迫ってくるノリの良さはスリル満点である。ヘンな表現だが、往年の英国のプログレッシヴ・ロックのようなサウンド・コンセプトを持っているように思えた。冒頭の曲での音像が勝手にグルグルと移動するような録音処理には面食らったが、それ以外は曲調にふさわしい清澄な音場を形成しており、そのあたりも満足できる。



 スウェーデンの新人女性ジャズ・シンガー、ロヴィーサのデビュー・アルバム「ザット・ガール」はこの夏の個人的ヘビィ・ローテーションであった。正直、彼女はそれほど上手い歌手とは思えない。高音は伸びてはいるが細身で儚げな声で迫力も粘りもなく、濃厚な色気など望むべくもない。ところが、このディスクのプロデューサーはそんな彼女の声を100%活かすような選曲とアレンジを施した。アメリカのスタンダード・ナンバーを中心に、ノンビブラート唱法により不自然な強調感を排除したアプローチで、曲の美しさを前面に出そうという作戦だ。聴き所のひとつであるバート・バカラックの「ルック・オブ・ラヴ」では、数多くのカバーが存在するこの曲の旋律美を一番うまく表現できているヴァージョンである。

 正調のジャズシンガーというよりアン・サリーとかコリーヌ・ベイリー・レイといったオーガニック系のシンガーに通じるところが多いと思うが、取り上げられた曲とリズム感はまさしくジャズそのもの。録音もそれに準拠しているからポップス系とは完全に一線を画する。とにかく、北欧の夏を思わせるクールかつ伸びやかなサウンドで、部屋の空気まで変わってくる本作は、しばし暑さを忘れるさせる一服の清涼剤のようである。



 クラシック好きなら必ず一枚は持っているであろうホルストの組曲「惑星」。最近はコリン・マシューズによる「冥王星」がカップリングされたディスクが目立つが、このデイヴィッド・ロイド=ジョーンズ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団盤は、従来のラストナンバーである「海王星」に続けてインターバルなしで演奏されている。しかし、あまりこの処理はスマートではない。いくらこの組曲の“続編”として作曲されたものだといっても、別のコンポーザーの手によるものだから曲調の違いは明白だ。“本編”とは一呼吸置いて収録して欲しかった。

 しかしながらそれでもこのCDは聴く価値がある。それは、圧倒的な録音の良さだ。正直言って大して上手いオーケストラとは思わないが、豊かな残響を活かした深々とした音場表現は、時として一流楽団の演奏に聴こえてしまうほどだ。今までの「惑星」のディスクではレヴァイン&シカゴ響のものが録音において最強かと思っていたが、(レコーディングのアプローチは正反対ながら)本作はそれと双璧を成すと言って良い。カップリングの「ソプラノと管弦楽のための劇唱“神秘のトランペッター”」はホルストの原曲を彼の娘イモージェンとマシューズがアレンジしたものだが、なかなかドラマティックな佳曲で、これを聴くだけでもディスク代の元を取れる(そもそも廉価盤なんだけどね ^^;)。
コメント
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