元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「HERO」

2007-09-15 07:18:44 | 映画の感想(英数)

 中盤、木村拓哉扮する主人公の検察官が、やっと見つけた証拠品である犯行に使った車の傷を得意満面で法廷にて披露するが、松本幸四郎演じる弁護士から“それは犯行時に付いた傷とは限らない”と一蹴されてショゲてしまうシーンがある。プロの法曹人ならこの程度の“反論”があることは予想するはずだが、それすら考慮していないような脚本の拙さに閉口した。この場面に代表されるように、この映画の筋書きは甘い。それも大甘だ。

 傷害致死事件が大物代議士のスキャンダルとリンクしているという設定は決して悪くないが、それを法廷ドラマとして大人の観客の鑑賞に堪えうるような作品に練り上げられているとは、とても言えない。プロットは御都合主義的で各キャラクターのメンタリティは子供並み。韓流ファンにも色目を使った釜山ロケなんてナサケなくてタメ息が出る。

 元ネタとなったテレビドラマは見ていないが(はっきり言って、見る気もなかったが ^^;)、人気ドラマを映画化することについては否定するものではない。ただし、おそらくは元ネタではお馴染みの登場人物やモチーフを“お馴染みのまま”に挿入してテレビ視聴者に媚を売って肝心の映画の質を貶めるようなマネをすることは、断じて納得できない。たぶん検事仲間のわざとらしいケレン味や綾瀬はるかと中井貴一のシークエンスなどがそれに当たるだろうが、それらは話の流れを阻害するだけで何ら作劇上のメリットになっていない。わざわざ劇場まで足を運んでくれるテレビドラマのファンに対し、映画ならではの骨太の展開を見せつけ、イッキに邦画好きにしてしまうような前向きの根性を見せろと言いたい。

 主演の木村は、ヘンに気取ったいわゆる“キムタク臭さ”が全開で、見ていて辛いものがあるし、松たか子の地に足が付いていないコミカル風演技も願い下げ。他のキャストについてはコメントさえしたくない。結論として本作は、熱烈なキムタクのファンか、10年に一回程度しか映画館に行かない層か、あるいは小中学生以外には奨められないシロモノである。良かったのは服部隆之の音楽ぐらいで、とっとと忘れたい映画だ。
コメント (2)
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