元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「羊たちの沈黙」

2007-09-05 06:46:16 | 映画の感想(は行)
 (原題:The Silence of the Lambs)91年作品。御存知“ハンニバル・レクター”を一躍有名にしたジョナサン・デミ監督作品でオスカー作品賞などかなりの評判を取った映画だ。若い女性を誘拐して殺害、その皮膚を剥ぐ、という凶悪な連続殺人事件を追うFBIは拘留中の天才的精神科医にして変質的殺人鬼レクター博士から心理面での手がかりを得ようと、誰の審問にも応じない彼の担当として実習生のクラリスを抜てきする・・・・という話の概要は有名作なので詳しく説明するまでもないだろう。

 で、私としては期待したほどではなかった、というのが正直な感想である。第一にプロットが弱い。ポイントになるはずの犯人の動機が前半部分でわかってしまうし、犯人そのものも描写不足。死体のノドに押し込められた蛾のサナギの意味がイマイチ納得できない。犯人の人となり(たとえばその異常性と普段の生活での人畜無害さの落差など)をもっと出してほしかった。

 映画のタイトルの意味はクラリスの少女時代における精神的外傷からきているが、これも十分活かされているとは言い難い。また、映画中盤のクライマックスともいえるレクターの脱走シーンだが、その方法はショッキングではあるが、途中でネタが割れてしまう。さらに、重要なキャラクターであるはずのFBIの上司もこれといった見せ場がない。

 ということで、あまり成功しているとは言えない映画だが、観る価値はある。それはクラリスを演じるジョディ・フォスターの熱演だ。地方出身で、生い立ちも幸福ではない、それでいて嘘のつけない誠実な性格のヒロインをうまく演じている。彼女が最初にレクター博士とガラスごしに“対決”する場面はこの映画の一番の見もので、お互い戦略を練りホンネを引き出そうとする丁々発止のやりとりは見事としか言いようがない。しかし、レクターに扮するアンソニー・ホプキンスはいただけない。狂気がなんとなく表面的で、真におそろしいものを見つけることができなかった。外見の変態ぶりよりも、性格をさらに突っ込んで描いてほしかった。
コメント
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