元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「永遠探しの3日間」

2007-09-26 06:50:11 | 映画の感想(あ行)

 (原題:3 Days to Forever )アジアフォーカス福岡国際映画祭2007出品作品。裕福な家庭に育った19歳のヒロインは、姉の結婚式を手伝いに行く前夜に遅くまで遊び呆けたため、翌朝目覚めると家族は彼女を置いて飛行機で出発した後だった。仕方がないので居合わせた大学生の従兄と2人で、姉が嫁ぐ街まで3日かけて車で行くことにする。インドネシアの若手リリ・リザ監督による青春ロードムービー。

 前に観た「逃亡くそたわけ-21才の夏」と似た設定のドラマである。あの映画とは違って本作の主人公二人は健常者だが、ハネッ返りの彼女と気弱な彼氏という構図は一緒。そして旅の途中で繰り返される対立と和解を通じて、自分を見つめ直し成長していく筋書きも同じだ。何かがきっかけとなりアイデンティティを確立してゆくというパターンは青春映画の王道だが、この映画もその定石をしっかり守っていて好感が持てる。

 ただし、東南アジア映画特有のタッチというか、テンポがのんびりしていて、まだるっこしい点が多々あるのは仕方がないか。観客の多くはジャワ島の地理に疎いため、彼らがどこへ向かっており、今どのへんにいるのか分からないのも辛い。地図を挿入するとか、字幕で説明するとかの工夫があっても良かった。それでもインドネシアの地方の風景や伝統行事が紹介されるのには興味深かったし、特に観光名所になっている墓地があるのには驚いた。ムスリムなのにカソリックの学校に通っていたというヒロインの屈折ぶりも面白い。

 見逃せないのは、旅を終えた二人がその9か月後に再会するラストシーンだ。実にホロ苦い幕切れながら、二人は特段いきり立つわけでもなく互いにそれを肯定してしてまうのは、間違いなくあの3日間の“成果”である。こうしたクールなスタンスを崩さないところは作者の賢明さの現れであろう。主演のアディニア・ウィラティとニコラス・サプトラは好演。特段持ち上げたくなるような傑作でもないが、観賞後の印象は決して悪くない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする