気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

未来のサイズ 俵万智 角川書店

2021-04-22 01:21:07 | つれづれ
トランプの絵札のように集まって我ら画面に密を楽しむ 

「夜の街」という街はない
カギカッコはずしてやれば日が暮れるあの街この街みんな夜の街

どこんちのものかわからぬタッパーがいつもいくつもある台所

子のために願うことなかれ願うとは何かを期待することだから 

抱きしめて確かめている子のかたち心は皮膚にあるという説

親という役割だけを生きる日の葉桜やさし授業参観 

最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て

「死ぬまでの待合室」と父が言う老人ホーム見学に行く

いつかまたいつかそのうち人生にいつか多くていつかは終わる

動詞から名詞になれば嘘くさし癒しとか気づきとか学びとか

(俵万智 未来のサイズ 角川書店)

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俵万智の第六歌集。読みやすくわかりやすく、腑に落ちる歌ばかりで楽しむことができた。現代短歌は「詩」であるべきという人には、浅く見えるのかもしれないが、原点回帰。これでいいのだ。第55回超空賞に決定。