この家にだあれもいない睡蓮の三つが咲いて一つは黄色
ヒサという婆さんがいた子規さんをのぼと呼んでは芋飴なめた
十代の決意のままに立っていて俺はおのずと傾いだ木だな
不機嫌という固まりになりきって微動だにせず冬日の犀は
ブンタンのころがる居間で時々に犀になったり河馬になったり
ふりあげた拳をおろす場所がないそんな日だった落ち葉を踏んだ
もしかして今は私が留守なのか寒晴れの空ただただ青い
草を引く老後を夢にしていたがむしろだんだん草になりたい
雲の寄る窓辺があってたまにだがそっと来ているキース・ジャレット
イーゼルは立てかけたままおそらくは画家は小鳥になってしまった
(坪内稔典 雲の寄る日 ながらみ書房)
ヒサという婆さんがいた子規さんをのぼと呼んでは芋飴なめた
十代の決意のままに立っていて俺はおのずと傾いだ木だな
不機嫌という固まりになりきって微動だにせず冬日の犀は
ブンタンのころがる居間で時々に犀になったり河馬になったり
ふりあげた拳をおろす場所がないそんな日だった落ち葉を踏んだ
もしかして今は私が留守なのか寒晴れの空ただただ青い
草を引く老後を夢にしていたがむしろだんだん草になりたい
雲の寄る窓辺があってたまにだがそっと来ているキース・ジャレット
イーゼルは立てかけたままおそらくは画家は小鳥になってしまった
(坪内稔典 雲の寄る日 ながらみ書房)