気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

雲の寄る日 坪内稔典 ながらみ書房

2019-12-16 23:43:23 | つれづれ
この家にだあれもいない睡蓮の三つが咲いて一つは黄色

ヒサという婆さんがいた子規さんをのぼと呼んでは芋飴なめた

十代の決意のままに立っていて俺はおのずと傾いだ木だな

不機嫌という固まりになりきって微動だにせず冬日の犀は

ブンタンのころがる居間で時々に犀になったり河馬になったり

ふりあげた拳をおろす場所がないそんな日だった落ち葉を踏んだ

もしかして今は私が留守なのか寒晴れの空ただただ青い

草を引く老後を夢にしていたがむしろだんだん草になりたい

雲の寄る窓辺があってたまにだがそっと来ているキース・ジャレット

イーゼルは立てかけたままおそらくは画家は小鳥になってしまった

(坪内稔典 雲の寄る日 ながらみ書房)