ああ君も短歌びと的嘆きをす自分探しに疲れただなんて
あけぼののほのか紅さす海岸に白き紐なる波もつれをり
竹串に刺さるる一瞬活海老がおのが命を振り払ひたり
駅までは役に立ちたる具体として捨て置かれたる傘がびしよ濡れ
愛恋に夕暮れは来てあをによし奈良漬色の中年後期
秋の夜はアフガン編みの固き目の行きて戻りてほうふくほうふく
十日前死にたる人のシェーバーに砂鉄のやうな髭が付着す
乳欲しと五体に泣けるみどりごの青水無月の闇のまん中
舞ふごとき納棺師の手に母の死が意匠されゆく違和となるまで
ベンチにて俯きをりし老いびとがつひに合点を得しごとく去る
(たなかみち 具体 角川学芸出版)
あけぼののほのか紅さす海岸に白き紐なる波もつれをり
竹串に刺さるる一瞬活海老がおのが命を振り払ひたり
駅までは役に立ちたる具体として捨て置かれたる傘がびしよ濡れ
愛恋に夕暮れは来てあをによし奈良漬色の中年後期
秋の夜はアフガン編みの固き目の行きて戻りてほうふくほうふく
十日前死にたる人のシェーバーに砂鉄のやうな髭が付着す
乳欲しと五体に泣けるみどりごの青水無月の闇のまん中
舞ふごとき納棺師の手に母の死が意匠されゆく違和となるまで
ベンチにて俯きをりし老いびとがつひに合点を得しごとく去る
(たなかみち 具体 角川学芸出版)