気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-05-02 18:42:36 | 朝日歌壇
ありふれた日々のけしきをよむこともあの地震からためらいながら
(ひたちなか市 沢口なぎさ)

ボタンひとつ押せば画像は逆しまに流れるものを雪ふりやまず
(ドイツ 西田リーバウ望東子)

今日もまだ紙面埋める東北の死者の名を読む年齢も読む
(彦根市 浜野寿美子)

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一首目。地震から50日以上が経ち、もう五月になってしまった。さまざまな困難は、すこしずつ解決することもあり、しないままのこともある。あまりに大きな出来事だったので、解決しないものが大半のように見える。時間も手間もかかる。離れた場所で、普通の生活をすることへの「申し訳なさ」はこれからも続くだろう。歌としては、ひらがなを多用し、日々、地震だけを漢字にして強調している。
二首目。一旦起こったことは、取り返しがつかないが「ビデオテープでもう一度」と巻き戻せそうな気にもなる。そうできたらどんなによいか!結句の「雪ふりやまず」で困難が続くことを象徴的に詠っている。
三首目。悲しいことだが、死者の名前を丁寧に読むこと、心に刻むことが何よりの供養になると思う。結句の「年齢も読む」がダメ押しのように強く響く。結句で歌に芯が通ったような気がした。