気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

RERA 松木秀  

2010-04-01 00:44:24 | つれづれ
勝ち組は何に勝ったか負け組は何に負けたかよくわからない

「止まったままの時計」がまたも惨劇を忘れぬためのアイテムとなる

平等院鳳凰堂のオの音のなんとも調子よく浄土へと

将軍様のプライベートな競馬場もグーグルアースはもれなく映す

検索でひとまず少し知ってみる深く知るため電源を切る

われよりも歳をとりたる十円を自販機に投ず がんばれ十円

「昔のコンクリートは気合い入っとる」母は原爆ドーム見て言う

ごみ箱は何でもごみにしてしまうミカンの皮も記念写真も

一人なら孤独で二人なら地獄三人集まれば社会学

わが街で親子惨殺事件ありようやくここも郊外となる

飛び降りる人とか首を吊る人とかも大抵の場合「前向き」である

触れたなら死ぬような線が数メートル頭上にありてその下をゆく

「無」の文字は「無」というものを示すにはちょっと画数が多すぎである

はつなつの風れられらと過ぎゆきて銀のしずくのしたたるまひる

(松木秀 RERA 六花書林)

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短歌人同人の松木秀さんの第二歌集『RERA』を読む。
松木さんは北海道登別市在住。集題の「『RERA』は「レラ」と読み、アイヌ語で「風」を意味します。」とあとがきにある。北海道では「レラ」がショッピングモールやプロバスケットチーム名になって、ちょっとした流行語となっているらしい。

歌はどれも一読わかりやすく、発見の歌、納得の歌が多い。日常生活の中で見逃しそうな、些細なことを拾って歌にしている。また、作者は死を意識していることが多く、ブラックユーモアの歌もあり、これは読者の好みの分かれるところだろう。
「…風れられら…」の歌など、松木さんにもこういう短歌らしい歌もあるんだと思ってしまった。