082:源（近藤かすみ）

朝なさなFMラジオ（ハチマルニ）に誘（いざな）はれ三分間の語源の旅す

081:早（近藤かすみ）

早くはやくと母に急かされ子は育ち巣立ちゆきたり東へ西へ

080:午後（近藤かすみ）

愛しきやし紅葉（もみぢ）してゆくハナミズキ午後の日差しのみじかさゆゑに

079:恥（近藤かすみ）

ペットボトルに口つけジュース飲むことを恥じゐし日のありちちははをりき

078:アンコール（近藤かすみ）

美術館「えき」を訪ひたし遠来のアンコール・ワット展開催中

077:屑（近藤かすみ）

ゆりかもめ呼ぶ小父さんがパン屑を繰りかへし撒くこの世の果たて

076:住（近藤かすみ）

子の住所すぐには思ひだせなくて薔薇のもやうの手帳をひらく

075:おまけ（近藤かすみ）

おまけにはおまけにされる理由（わけ）がある金木犀のかをる坂道

074:肩（近藤かすみ）

恋人は左肩より消えてゆく映画のラストシーンのやうに

０７３：マスク(近藤かすみ）

この春に購ひしマスクは箱のなか息をひそめて待機してをり