「ビリー・エリオット」ファンの一人として、このミュージカル・ライブの日本上映は待ちに待った企画でした。上映期間一週間の限定ロードショー。この予定を最優先して、週末に銀座まで出かけました。
「ビリー・エリオット」はこのブログでも何回かに紹介しているのですが、イングランド北部の炭鉱町に住む炭鉱夫一家の少年がロイヤルバレエスクールに入学するまでを描いたミュージカルです。映画(邦題は「リトルダンサー」)をミュージカル化したものですが、エルトン・ジョンの音楽が素晴らしく、ロンドンでは来年で10年になるロングランを続けています。
私がこのミュージカルが好きなのは、いろんなタイプのエルトン・ジョンの音楽が楽しめることに加え、少年の成長物語であり、家族愛を描くヒューマン・ドラマでもあり、炭鉱夫のストライキを背景にした社会派ドラマであるという深いドラマであること。主人公ビリーが見せる時に激しく、時に美しい踊り。出演する少年・少女たちのかわいらしい演技。そして、イギリスらしいユーモア。これらが綺麗に融合され、一つの公演として昇華されていることにあります。見れば見るほど、聴けば聴くほどに、その良さに気づかされます。
今回も改めて、このミュージカルの良さを堪能しました。特に、今回は日本語字幕が付くので、今まで聞き取れていなかった北部イングランド訛りの英語(例えば、お金は「マネー」でなくて「モネー」)の意味が分かって、嬉しかった。細かいところではありますが、「こんなことを言っていたのね」と分かったところが数多しです。
劇場版の実写版なので、カメラワークが舞台の雰囲気をさらに盛り上げます。劇場では分からないような役者さんの表情や、お婆ちゃん役のシワ(出演のアン・エメリーさんは80歳以上との噂)なんが大スクリーンにアップで映されるものだから、生ではないのだけど生では味わえない迫力やディテールを感じることができます。ただ、逆に前半のビリーのアングリー・ダンスの場面や、後半の成長したビリーと一緒に白鳥の湖を踊るシーンとかは、もっとカメラを引いて撮るところがあっても良いのにと思いました。アップで追うあまり、迫力はあるのだけど、ビリー君がどんなにステージ上を動き回っているかが伝えきれていない感があったからです。
マニアの間では、主役のビリー君の違い(たいていロンドンでは3-4名のビリー君がローテーションで廻している)に注目が集まるようですが、今回のビリー君は、私が見た中(過去3名のビリー君歴)では最も精悍かつ愛くるしい、「ビリー」らしいビリーだったと思います。正直、バレエやダンスは他にもっと上手なビリー君が居ると思うのですが、持つ雰囲気や演技は素晴らしかったです。
公演前にビリー君によるバックステージツアーがあったのも良かったし、今回のフィルム化に企画のため、最後のアンコールで過去のビリー君たち20名以上がステージに現われて踊るところなどは圧巻でした。
いつか日本でこのミュージカルをやってくれないか切に願います。
監督スティーブン・ダルドリー
脚本リー・ホール
音楽監督エルトン・ジョンキャスト
エリオット・ハンナ: ビリー・エリオット
ラシー・ヘンズホール: ウィルキンソン先生
デカ・ウォームズリー: ジャッキー・エリオット
リアム・ムーア: 大人のビリー・エリオット
アン・エメリー: ビリーの祖母