その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団/ ブラームス交響曲第4番ほか

2014-12-15 21:42:28 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 私にとっては、今年最後となるオーケストラの演奏会。ドイツ・カンマ―・フィルの来日公演最終日です。この楽団の正式名はDie Deutsche Kammerphilharmonie Bremen、文字通り訳すと「ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー」となります。プログラムの日本語表示では「ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団」。何故ブレーメンを入れないのか不思議ですが、ブレーメンに本拠を置く室内楽団です。

 今回は「ブラームス・シンフォニック・クロノロジー」と題し、交響曲のチクルスをはじめとしたブラームス・プログラムで、ツイッタ―上でもかなりの評判になっていました。この日は、シリーズ最終日と言うこともあってか、会場のオペラシティコンサートホールは期待感の混じった熱気でむんむん。私的にも、初めて聞く外オケである上に、来季よりN響の常任指揮者となるヤルヴィさんの指揮を初めて体験すること、大好きなヴァイオリニストであるクリスティアン・テツラフも登場することの3つも期待が重なり、気合を入れて臨みました。

 ブラームス「悲劇的序曲」で始まったこの日の演奏。久しぶりに体験するブルドーザーのような音塊に仰天しました。日本のお行儀のよいアンサンブルにすっかり慣れっこになってしまった私の耳には、コンサートしょっぱなからかなり衝撃的。コントラバスは4名しかいないのに、室内楽団のイメージとは全く異なる、粗削りで勢いのある演奏に先制パンチを食った感じ。

 続いては、テツラフ兄妹(どっちが年上かは知りませんが)のソリによる、ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」。ターニャさんのチェロも美しかったですが、ここはやはりクリスティアンのヴァイオリンでしょう。優雅でありながらキレがある演奏はいつも惚れ惚れするばかり。オケとの息もぴったり合っていました。更に、圧巻だったのはアンコールのコーダイの「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」。テツラフ君の技と紡がれる美音に、ただただ陶酔です。

 休憩後は、いよいよチクルス最後の交響曲第4番。ぼんやりモードで入った第一楽章冒頭でしたが、段々と興が乗ってきると雪だるま式に音が大きくなります。調和の美しさとか、整ったアンサンブルというのとは全く無縁の演奏で、個性と個性がぶつかり合う、まさに音の格闘技。これは人によって好き嫌いが分かれるかもしれません。ベルリンフィルとかウィーンフィルとかだと、この激しさの上に更に洗練さが乗っかるのですが、このオケは洗練さを求めることはしない様子です。指揮のヤルヴィさんも大きなジェスチャーでスケール大きく、ガンガンに鳴らさせます。第3楽章では指揮台上でジャンプまでしていました。聴く方も力が入りっぱなしですから、第四楽章が終わった時にはヘトヘト。でも、こういう演奏って、日本のオケにはなかなかないんですよね。普段は聴けないものを聴けた満足感で一杯です。

 アンコールでは、鳴り止まない拍手に応えて3曲もご披露してくれました。ブラームスの4番の余韻が残る中でのアンコールと言うのもなかなか難しいものがあると思うのですが、最後の最後はこの日唯一のブラームスでない曲、シベリウスの「悲しきワルツ」で後味良く〆て頂きました。


 各演奏後、ホールは聴衆からの大拍手で包まれました。オーケストラが退場した後も拍手は続き、ヤルヴィさんの一般参賀。同じブラームスでも、まるで違う演奏を聴かせてくれるこうしたオーケストラの来日はとっても刺激になります。

 一方で、私的には来年秋からのN響との組み合わせは、はたしてどうなるのか、期待と不安が入り混じる感想を持ちました。ヤルヴィさんがこのカンマ―・フィルをどう育ててきたかは知りませんが、カンマ―・フィルとは対極にあるようなN響を来年、どう導いていくのか?新たな境地を開いてくれるのかもしれないし、水と油だったら・・・などと頭をよぎります。まあ、お互いプロフェッショナルなのだから、素人のつまらん勘繰りを超えたものを聴かせてくれるのでしょう、と期待したいです。来年以降の大きな楽しみの一つとなりました。


パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団
ブラームス・シンフォニック・クロノロジー


[出演]
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
チェロ:ターニャ・テツラフ
ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団

12/14[日]15:00
ブラームス:

•悲劇的序曲 op.81 
•ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 op.102 
(ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ、チェロ:ターニャ・テツラフ)
•交響曲第4番 ホ短調 op.98 


[ソリストアンコール]クリスティアン・テツラフ(Vn)、ターニャ・テツラフ(Vc)
・コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 op.7より 第3楽章

[オーケストラアンコール]
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第3番 ヘ長調
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第10番 ヘ長調
・シベリウス:悲しきワルツ



Paavo Järvi
Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen
"Brahms Symphonic Chronology" [4]

[Artist]
Paavo Järvi (Cond), Christian Tetzlaff (Vn), Tanja Tetzlaff (Vc), Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen
[Program]
Brahms
Tragic Overture, op.81
Double Concerto in A minor for Violin, Cello and Orchestra, op.102
Symphony No.4 in E minor, op.98



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