
先日読んだ『本物の英語力』で紹介されていた吉村昭氏の小説を手に取ってみた。江戸時代末期、日本に憧れ渡航したアメリカ人ラナルド・マクドナルドと長崎通詞(世襲役人で公式の通訳者)森山栄之助の交流が描かれる。小説ではあるが、実在の人物を描いた作品だ。
長く続いた鎖国政策で閉ざされていた日本が、欧州列強の捕鯨ブームや経済侵略といった世界情勢の中、否が応でも列強からの開国要求プレッシャーを受ける。そうした時代の空気が良くわかる。
限られたリソースの中で英語を学ぼうとする長崎通詞の苦労や努力にほどほど感心する。語学は習得の早い遅いは個人差があるだろうが、要はこの切羽詰まり感があるかないかの違いなのだろう。
私には、黒船を迎えて慌てる当時の日本人と、グローバリゼーションの時代を迎えて「グローバル人材育成」を連呼する現代日本人が極めて相似形に見えた。あまり日本人のメンタリティというのは、幕末も今も変わってないのかもしれない。鎖国政策が残した「遺産」は大きい。