その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

ビル・パーキンス (著), 児島 修 (翻訳) 『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社、2020)

2023-07-05 07:19:39 | 

無駄遣いをする必要はないが、ただ無駄に貯蓄することも人生にとって望ましくないということを気づかせてくれる一冊。

私自身、若い時からモノ消費には殆ど関心が無くて、今でいうコト消費主義だったので、本書の主張は首肯できることばかり。漠然と感じていたことを言語化されていたり、新しい気づきも得られた。

以下、いくつか、激しく同意した点(★)、新しく気づかされた点(☆)を抜粋。

☆経験から得る価値は、時間の経過とともに高まっていく。これを「記憶の配当」と呼ぶ。(お金を払って得られるのはその経験だけではなく、その経験が残りの人生でもたらす喜び、つまり記憶の配当も含まれている。)
★最大限に人生を楽しむ方法は(経験)を最大化すること。 人生は経験の合計である。
★莫大な時間を費やして働いても、稼いだ金を全て使わずに済んで死んでしまえば、人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになる。その時間を取り戻す術は無い。 ( 今の生活の質を犠牲にしてまで、老後に備えすぎるのは、大きな間違い)
☆どんな経験でも、いつか自分にとって人生、最後のタイミングがやってくる。私たちは皆、人生のある段階から次の段階へと前進し続けるが、ある段階が終わる事で、小さな死を迎え、次の段階に移る
☆タイムバスケット(時間軸付きのバケットリスト)は、人生に対して積極的なアプローチが取れる。残りの数、10年の人生を5年、80年の単位で分け、期間内にやりたいことを実現させていく。 
☆寄付も財産贈与も生きているうちにやるべき
★経験を楽しむには、金だけではなく、時間と健康も必要だ。老後資金を必要以上に増やそうと働き続けると、金は得られても、それ以上に貴重な時間と健康を逃してしまうことになる

具体的にはキャッシュフローをマイナスに持って行く手法(0で死ぬためにお金を減らす方法)も解説されているが、まあここにこだわる必要はないだろう。

「仕事こそ人生の経験値として大きな意味がある」と考える、ある意味とっても幸せな人にも、その考えの盲点が指摘されている。最後は人それぞれの価値観なので、良い・悪いは無いと思うが、違った角度で自分の価値観を見直すのも意味がある。

ある一定の年齢(50ぐらい?)を超えた人にはとっても有効なアドバイスだと思う一方で、若い人への受け止められ方は微妙な気がした。

「仕事もしたいし、家族も大事にしたい、そんな自分のことばかり考えてられないよ。」「ゼロで死ぬどころか、今の生活と多少の老後の備えで手一杯だよ。」そんな声は聞こえてきそうだ。ただ最近の投資ブームや老後資金2000万円問題などの背景も考えると、本書は共感できる人と必ずしもそうではないと感じる人に分かれるかもしれない。

いずれにせよ、自分の人生について過去・現在・未来を考えさせられる主張であり、一読をお勧めできる一冊だ。


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