ロンドン駐在時に、ロイヤル・アカデミーには企画展では何度か足を運びました。が、何故か常設展は結局見ずじまいでした。今回、日本でロイヤル・アカデミー展があると知って、狂喜。珍しく、会期後半にずれ込むことなく、訪問です。
《こちらがロンドンのロイヤル・アカデミー》
ロイヤル・アカデミー創設期(1768年)から20世紀初頭にいたるまで、会員やゆかりの人たちの作品が幅広く展示され、イギリス美術史を追っかけるように、イギリス人画家達の作品を鑑賞できます。ちなみに展覧会の英語タイトルは、"Genius and Ambition: The Royal Academy of Arts, London 1768-1918"。
私には、前半にターナー、ゲインズバラ、コンスタブルなどの好みの画家・作品が集中していました。特に、コンスタブル(この展覧会では「カンスタブル」と表示)の《水門を通る舟》を見つけた時の嬉しさと懐かしさ。まさに、このフラットフォードのスツール川沿いをウォ―キングした時の風景がそのまま思い起こされます(当時の記事「コンスタブル・カントリーを歩く」はこちら→)。まさにこの絵にある、ロック(水門)の横を歩いていたのです。今も昔も、殆ど風景が変わらないイギリスの田舎。全くの自己満足なのですが、コンスタブルが描く風景(遠くに見える教会も)、人々、動物を見ながら、自分自身が絵の中に吸い込まれていくような気になりました。
ジョン・コンスタブル 《水門を通る舟》 1826年|油彩・カンヴァス|101.6×127.0cm
このコンスタブルの絵も然りですが、今回の展示の多くの絵がロイヤル・アカデミーで学んだ画家たちのDiploma Work(=Works of art presented by artists upon their election as Member of the Royal Academy. 入会作品?)と額縁に記されているのが、印象的でした。ラファエル前派の創始メンバーとして有名なミレイによる《ベラスケスの思い出》もそうでしたし、ホーズリ《居心地のよい場所》、エルモア《「ヴェローナの二騎士」より》(これらの人の作品は、ラファエロ前派ではないですが、色使いや描写が似ているところがあると思いました)もそうです。Diploma Workらしい気持ちが入った作品と思ったのは、私の思い過ごしでしょうか。
ホーズリ《居心地のよい場所》1865年|油彩・カンヴァス|76.8×57.1cm
エルモア《「ヴェローナの二騎士」より》1857年|油彩・カンヴァス|70.1×53.9cm
そのほかにも、ウォ―ターハウスらのラファエル前派、唯美主義の絵など、近代の英国美術を堪能できます。非常に良い企画展ですので、お勧めします。
蛇足ですが、今回、初めて足を運んだ東京富士美術館。八王子の奥にあり、都心でもなければ観光地でもない、こんな不便なところに美術館があるのだろうと思ったら、池田大作氏(創価学会)所縁の美術館なのですね。このような私立の美術館が、これだけの企画展を主催するとは、流石、学会様。
加えて、特別展と並行して常設展も鑑賞できるのですが、この常設展のコレクションに肝を抜かれました。ベリーニ、ティントレット、クラーナハ(父)等のルネッサンス期の作品からラ・トゥール、ブーシェ、ドラクロワなどのフランス画家、そして、マネ、ルノアール、ピサロとい言った印象派などがゴロゴロ。まさか、ロイヤル・アカデミーの展示意外にこんな作品群を鑑賞できるとは。思ってもみませんでした。改めて、学会のパワー、底知れぬ財力に恐れ入りました。脱帽です。ロイヤルアカデミー展に行かれる方は、常設展にも是非、立ち寄ってください。東京富士美術館のHPはこちら→