その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

やっぱり素晴らしい! <ミュージカル ビリー・エリオット> @東京建物Brillia HALL

2024-09-27 07:30:13 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

大好きな「ミュージカル ビリー・エリオット」の日本語版の再演があり、足を運んだ。

(イングランド北部訛り英語の)日本語化の難しさ、政治・社会の理解のハードル、子役陣の育成などなど、この作品の日本語化は極めて難しいと思うのだが、今回で3回目となる日本語公演を実現させた関係者の努力に感謝したい。これは安定した固定ファンの支持もあってのことでもあると思う。

一方で、ロンドンでのロングランはずいぶん前に終了しているし、日本でも3度目ともなるとチケット販売に苦戦しているところはあるようだ。直前購入の割引DMが私のメールボックスにも入ってきていた。

私自身は、日本語公演の観劇は2017年に続いての2回目で、7年ぶりである。観客の8割以上が女性で、ブルックナーの演奏会の真逆を行く華やかな雰囲気。おじさんにはアウエー感満載だったが、「ビリー」にかけての熱意は負けないつもりなので、「ここはワイのホームだ」と自信をもって着席。

冒頭のダーラムの炭鉱ストライキの映像には、サッチャー政権の炭鉱国有化廃止の演説のフィルムが差し込まれていたり(これが無いと今やサッチャーも歴史的政治家だから理解されないだろう)、ロイヤルバレエスクールのオーディションのシーンで、ビリーが用意したカセットテープを回すシーンが無くなっていたりした変更には気づいたものの、基本的にはこれまでの版と同じで、懐かしさで一杯だった。(個人的な話で恐縮だが、このミュージカルは私がロンドン駐在時に一番繰り返して観た作品なので、ロンドン生活の思い出と重なっているのである。)

改めて、本当によくできたミュージカルであることを確認する。階級問題、ジェンダー問題、LGBT、中央・地方格差、地域の共同体意識、経済政策、世代間の価値観乖離、親子の愛、様々なテーマを作品の中に織り込み、ごっちゃ煮にしつつ、ビリーの成長物語として涙と笑い一杯に仕上げる。そして、それを彩るエルトン・ジョンの耳に残る名曲の数々。

今回の公演で言えば、ビリーの石黒瑛土君はもう少しワイルドさや舞台映えが欲しい感じはあったが、悩みもがく寂しがり屋の少年ビリーを堅実に演じた。親友マイケル役の豊本燦汰君ものびのび好演。ダンス陣、子役のバレエダンサーたちもグッド。子役たちの稽古は、ロンドンのロングラン時のような長期に渡って継続的に出演し続けるわけではないので、公演前に相当な準備が入ると思うが、ホント頑張っている。

大人組では、ウイルキンソン先生役の安蘭けいの存在感や動きが、「さすが元宝塚スター!」というオーラであった。鶴見慎吾はちょっと格好良すぎるお父さんだが、長男トニー役の西川大貴との確執は迫力満点で、夫々に感情移入してしまう。

細かいところを上げれば、ピケの迫力やスト破り(Scab)の位置づけ等、もっとこうして欲しいと思うところはあったものの、細かい点はこの作品の良さを考えれば全く気にならない。久しぶりにこのミュージカルの生演を鑑賞できたことを、心から感謝した。

個人的にイチ押しミュージカルなので、是非、一人でも多くの人に見て欲しい作品だ。東京公演は10月26日(土) まで。

 

 

[東京・オープニング公演]2024年7月27日(土)~8月1日(木)
[東京公演]2024年8月2日(金)~10月26日(土)
[東京]東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)


キャスト

ビリー・エリオット:石黒瑛土
お父さん:鶴見辰吾
ウィルキンソン先生:安蘭けい
おばあちゃん:阿知波悟美
トニー(兄):西川大貴
ジョージ:芋洗坂係長
オールダー・ビリー:厚地康雄
ブレイスウェイト:森山大輔
死んだお母さん:大月さゆ

加賀谷真聡、黒沼亮、後藤裕磨、齋藤桐人、聖司朗、辰巳智秋、照井裕隆、春口凌芽、丸山泰右、森内翔大、小島亜莉沙、咲良、竹内晶美、森田万貴、石田優月、白木彩可、新里藍那

マイケル:豊本燦汰
デビー:内藤菫子
トールボーイ:猪股怜生
スモールボーイ:張浩一
バレエガールズ:石澤桜來、鈴木結里愛、松本望海、南夢依、宮野陽光

スタッフ

ロンドンオリジナル・クリエイティブスタッフ
脚本・歌詞:リー・ホール
演出:スティーヴン・ダルドリー
音楽:エルトン・ジョン
【振付】ピーター・ダーリング
【美術】イアン・マックニール
【演出補】ジュリアン・ウェバー
【衣裳】ニッキー・ジリブランド
【照明】リック・フィッシャー
【音響】ポール・アルディッティ
【オーケストレーション】マーティン・コック

日本公演スタッフ
【翻訳】常田景子
【訳詞】高橋亜子
【振付補】前田清実・藤山すみれ
(ドラスティックダンス"O")
【音楽監督補】鎭守めぐみ
【照明補】大島祐夫・渡邉雄太
【音響補】山本浩ー
【衣裳補】阿部朱美
【ヘアメイク補】柴崎尚子
【擬闘】栗原直樹
【演出助手】伴眞里子・坪井彰宏・加藤由紀子
【舞台監督】松下城支
【技術監督】清水重光
【プロダクション・マネージャー】金井勇一郎

コメント
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