その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

記憶に残る「オテロ」: チョン・ミュンフン指揮、東フィル @東京オペラシティコンサートホール

2023-08-01 07:09:25 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

圧倒的なパフォーマンスでした。独唱陣、合唱、オケどれも素晴らしい出来で、演奏会方式ながら本格的な演技と小道具も入り、ヴェルディ晩年の傑作オペラを十二分に堪能しました。

独唱陣では表題役のグレゴリー・クンデさんが圧巻。ホールを貫き通す声量と美声に加え、演技も感情の入った表情、身体表現で、孤独で嫉妬に狂う将軍オテロを演じました。

加えて、影の主役ともいえるイアゴー役のダリボール・イェニスさんの悪人ぶりも、大柄な体躯とワイルドな外見、圧を感じる声量で存在感が凄まじい。オテロとイアゴーが並び立つ様は映画のプロモーション・スチール写真のように絵になります。2幕ラストの二重奏の迫力は、ヘビー級ボクサーのパンチを貰うような衝撃でした。

デスポーザ役の小林厚子さんさんも健闘。グールドを目の前で歌われて耳が大丈夫なのだろうかと心配になるほどでしたが、可憐で純真な女性を涙を誘う演技でした。第3幕のアリア「柳の歌」は涙なしには聴けません。

合唱団は国立劇場合唱団。第1幕冒頭の嵐の場面から迫力ある合唱で緊張感を高めてくれました。

歌手陣・合唱と比べ、勝るとも劣らずに素晴らしかったのが東フィル。普段は新国立劇場のビッドからの演奏を聞いていますが、こうしてステージ上の東フィルを聞くのは初めてかも。しかも、指揮はチョン・ミョンフンさん。きっと15年以上前にN響でマーラーの9番を聴いて以来です。

チョンさんは暗譜でした(オペラを暗譜で振って、あまり見たことない)。創り出される音楽は、ダイナミックかつ、1本のしっかりした芯が通っています。ブレが無くて、実に強靭な印象です。(新国オペラハウスではいつも4階、今日はTOCコンサートホール1階という違いもあるのかもしれませんが)パワフル歌手陣と競うような音圧がすごい。また、静かな場面では優しく奏でられるアンサンブルが胸を打ちます。失礼ながら、「東フィルってこんなに上手なんだ~」と思ったぐらいでした。

終演後は、ホールは熱狂的と言っていいような、大きな拍手と歓声に包まれました。オペラシティコンサートホールならでは音の反響で、ホール全体感の一体感が倍増される感じです。とっても、レアで貴重な音楽体験でした。

 

2023年7月27日(木)19:00
東京オペラシティ
コンサートホール

第156回東京オペラシティ定期シリーズ 
指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

オテロ(テノール):グレゴリー・クンデ
デズデーモナ(ソプラノ):小林厚子
イアーゴ(バリトン):ダリボール・イェニス
ロドヴィーコ(バス):相沢 創
カッシオ(テノール):フランチェスコ・マルシーリア
エミーリア(メゾ・ソプラノ):中島郁子
ロデリーゴ(テノール):村上敏明
モンターノ(バス):青山 貴
伝令(バス):タン・ジュンボ

合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

ヴェルディ/歌劇『オテロ』
全4幕・日本語字幕付き原語(イタリア語)上演

原作:ウィリアム・シェイクスピア『オセロー』
台本:アッリーゴ・ボーイト

公演時間:約2時間50分(休憩含む)

 

July 27, 2023, Thu 19:00
Tokyo Opera City (Concert Hall)

The 156th Subscription Concert in Tokyo Opera City Concert Hall
Conductor: Myung-Whun Chung (Honorary Music Director)

Otello: Gregory Kunde
Desdemona: Atsuko Kobayashi
Iago: Dalibor Jenis
Lodovico: Hajime Aizawa
Cassio: Francesco Marsiglia
Emilia: Ikuko Nakajima
Roderigo: Toshiaki Murakami
Montano: Takashi Aoyama
A Herald: Junbo Tang

Chorus: New National Theatre Chorus

Verdi: Opera "Otello" in concert style


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