コロナ禍で聴衆は少ないものの名演が続くN響。今回も素晴らしい演奏だった。ショーソン、ラヴェルのフランスもので固めたプログラムも魅力度抜群。
私には特に前半の感銘が大きかった。「クープランの墓」は吉村さんのオーボエが卓越。オケの中でも、不思議なほど音が美しく引き立つ。決してオーボエのための音楽ではないはずなのだが、オーボエ用の音楽かと思うほど。
続いてはショーソンとラヴェルの2曲のヴァイオリン曲。独奏を務めた辻彩奈さんの演奏は初めて。濃いブルーの映えるドレスで登場した辻さんは、独特のオーラを放っていた。ヴァイオリンもスリムな体からは想像できないほどの芯があって主張を感じる音だ。ショーソン「詩曲」は美しくも幻惑的で艶やか演奏だった。そして、ラヴェルの「チガーヌ」は民族色豊かで技巧的な響きがホールを満たした。ともに初めて聴く曲だが、体がどんどん前のめりになる引力を持っていた。プロフィールだと20歳代前半の若さなのだが、ステージ上の落ち着きと度胸、風格は相当の大物感が漂う。アンコールもやってくれた。
後半は私の好きな2曲が並んだ。ただ、この2曲、いまだ自分の中にデュトワの残像があるのが厄介。今日の沼尻さん、N響の演奏も全く不満はないのだが、あのキラキラ感を思い出してしまい、ちょっと申し訳なかった。
興行的にはもっとお客さんが居ないと厳しいというのは分かるのだが、皮肉なことに「少数精鋭」の聴衆の演奏会は、通常のN響定期にはないストレスフリーで、いい雰囲気の演奏会なのである。来週のサントリーも行きます~。
NHK交響楽団 1⽉公演 東京芸術劇場
2021年1月22日(金)開場 6:00pm 開演 7:00pm
指揮:沼尻竜典
ヴァイオリン:辻󠄀 彩奈*
ラヴェル/組曲「クープランの墓」
ショーソン/詩曲 作品25*
ラヴェル/チガーヌ*
ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル/バレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全曲)
NHK Symphony Orchestra January Concerts at Tokyo Metropolitan Theatre
Friday, January 22, 2021 7:00p.m.
Tokyo Metropolitan Theatre
Ryusuke Numajiri, conductor
Ayana Tsuji, violin*
Ravel / "Le tombeau de Couperin," suite
Chausson / Poème Op. 25*
Ravel / Tzigane*
Ravel / Pavane pour une Infante défunte
Ravel / "Ma mère l’Oye," ballet