テレビでは、首都圏の人出は4月の緊急事態宣言時に比較して7倍と報道していたが、この日曜日の新宿、原宿は随分人は少なかった。代々木公園も閑散としていた。NHKホールも席は1席開けての配席でもあるし、宣言下で外出を控えた購入者(家人もその一人)がいたのは理解しつつも、全体として3割程度の入りでちょっと寂しかった。しかしそんな会場の空席とは無関係に、この日の演奏はとても熱いもので、自分にとっては素晴らしいコンサート初めとなった。
指揮は、久しぶりの外国人の方でファンホ・メナさん。2017年のコンサート初めもこの方だった。今日は、スペイン、フランス、アルゼンチンの作曲家によるラテン系プログラムで珍しさも加わり、とっても魅力的。ラストの「ダフニスとクロエ」を除いては全曲初めてだ。
メナさんがバスク地方出身と言うのが関係しているかどうかはわからないが、自家薬籠中の物という感じで、伸び伸びしなやかな指揮ぶりで、N響の演奏もそれに思う存分応え、初めて聴く音楽でもそのすばらしさが十二分に味わえ、聴きごたえ満載だった。
前半のハイライトであるファリャ交響的印象「スペインの庭の夜」は、まるで千夜一夜物語の情景が目に浮かぶような演奏。スペインのアンダルシア州生まれと言うピアノ独奏のぺリアネスにとっても十八番の一曲と言う感じの演奏ぶりだった。アンコールはファリャ作曲の「アンダルシアのセレナータ」。
後半の「ダニダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番は圧巻の演奏。第2組曲の冒頭<夜明け>はキラキラと眩いばかりの色彩が音に漂っている。<無言劇>でのフルートの独奏は心揺さぶられ、フィナーレの<全員の踊り>ではエクスタシーを感じる。メサさんも大きな体を指揮台の上で何度も飛び跳ねて、のりのり。演奏後も実に満足げな様子だった。
ブラボーと叫べないのが本当につらい。皆さん同じ思いだったようで、ステージで楽員解散した後も、拍手は続き、しばらくしてからメナさん再登場。聴衆は少なくとも、実に熱い聴衆で、暖かい空気がホール一杯に漂っていた。メナさん、この一プログラムだけというのは実にもったいない。
帰路の代々木公園も、普段のおやじさんロックンローラーの爆音もなく、ひとり余韻に浸りながら駅に向かう、素晴らしいコンサート体験だった。
NHK交響楽団 1⽉公演 NHKホール
2021年1月17日(日)3:00pm
NHKホール
指揮:ファンホ・メナ
ピアノ:ハビエル・ペリアネス*
ピエルネ/「ラムンチョ」序曲
ファリャ/交響的印象「スペインの庭の夜」*
ヒナステラ/バレエ組曲「パナンビ」作品1a
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番
NHK Symphony Orchestra January Concerts at NHK Hall
Sunday, January 17, 2021 3:00p.m.
NHK Hall
Juanjo Mena, conductor
Javier Perianes, piano*
Pierné / "Ramuntcho,"incidental music—Overture
Falla / "Noches en los jardines de España," impresiones sinfónicas*
Ginastera / "Panambí," ballet suite Op. 1a
Ravel / "Daphnis et Chloé," suite No. 1 & No. 2