その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

藤井 保文『アフターデジタル2 UXと自由』日経BP、2020

2021-01-08 07:30:02 | 

お正月の読書、2冊目。

前著『アフターデジタル』(2019年3月発刊)からの世の変化(コロナ禍含む)も踏まえ、更なる深堀や誤った解釈の修正のために書かれた続編。アフターデジタルという世界の中で持つべき「精神」(基本的理念)と「ケイパビリティ」(能力と方法論)を提示している。中国におけるスターバックスの逆襲や米国における「D2C」の動きなど、前著発行から2年と経たずして、世界の「デジタル化」が多様な形で進んでいることに驚きを禁じ得ない、

一貫して説かれるのは、DXの目的はユーザの状況理解にもとづいた「新たなUXの提供」ということだ。ここで言うUXとは、単なるUI(ユーザインターフェイス)ではなく、「ユーザ(デザイン)、ビジネス、テクノロジー(機能)の3つがそれぞれ関わり合うときに生まれる体験・経験」(p131)である。そして、DXに挑むビジネスパーソンとその組織が持つべき「精神」と「ケイパビリティ」を「UXインテリジェンス」と呼び、その理論的フレームワークと日本企業への処方箋が示される。

読み易い日本語ではあるものの、その意味しているところを理解するのは簡単ではない。何度か読み返したい著作だ。更に、実践に移すとなると、個人一人の理解では影響力は限定的で、組織の共有知まで高める必要がある。内容については首肯できるところが多いが、現実との大きな溝をどうジャンプすれば良いのか、戸惑いはかえって大きくなったというのが正直なところだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする