その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

晩秋の甲斐路 @慈眼寺(笛吹市・一宮町)

2019-12-13 07:30:00 | 旅行 日本

 11月最後の土曜日、山梨に所要があって出かけた。週末朝の中央高速道の下り渋滞を想定して早めに東京を発ったら思いのほか混雑は無かった。勝沼インターを降りて20号のバイパスを西に向かって走っていると、道路脇に「慈眼寺」なる標識が立っていた。標識になるような寺なら何か立派なものに違いないと誘われるように立ち寄った。

雲一つない青空の中、甲府盆地に佇む寺は静かで落ち着いた威厳を備えた寺だった。境内に入ると歴史を感じる本堂が目に入る。縁起が書かれた表札を読むと、真言宗智山派の寺で本堂・庫裏・鐘楼門は江戸時代前期の建物として、国指定重要文化財指定を受けているとのことだ。

境内には真っ赤に色づいた楓が朝日を浴びて輝いている。その反対側には、ユズと柿の実がなっている。青空に吸い込まれるような実の黄色と柿色が美しい。小説や映画に出てきそうな田舎の寺の風景である。

庫裏の中を覗くと、寺守のような老婦人(失礼なが老婆という表現がぴったり)が箒をかけていた。その老婦人から「どうぞ、中に入ってください」と言っていただいたので、庫裏から中に入れていただく。入口の土間は端が台所になっていて竈がある。裏から廊下伝えに本堂に入る。仏像を求めて廊下から障子をあけて本堂内の仏間を覗いたが、小さな仏像が何体か置いてあったが、暗くてどんなものかは良く分からなかった。廊下の天上には、昔の駕籠がかかっている。夏に訪れた恵林寺にもかかっていたが、これは山梨のお寺のお作法なのかな。

30分弱ほどの滞在だったが、鳥の鳴き声以外は箒の音ぐらいしか聞こえない静かな秋の寺の朝は、時間が止まった感覚になる貴重なひとときだった。

  
<寺の入口。周囲は桃畑である>


鐘楼門(重要文化財)> 


<本堂(重要文化財)>


庫裏(重要文化財)>


〈仏間〉


<廊下奥の天井に駕籠がかかっている〉

 
〈楓の色はなかなか綺麗には撮れませんね〉


〈ユズと柿(後方)〉

余談だが、すぐ近くに甲斐の国の国分尼寺跡もある。何もない跡地を見ながら1300年以上前の当時を想像するのも楽しい。


〈こちらも20号バイパス沿い。慈眼寺からすぐです〉

2019年11月30日


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