ロンドン在住時にコートールド美術館には2回しか行けなかったが、好きな美術館の一つであった。中心部にあるにもかかわらず、邸宅の一室のような館内で、ナショナルギャラリーやポートレート美術館のように観光客で一杯ということもない。落ち着いて、好きな絵を好きなだけ鑑賞できる空間だった。
そのコート―ルド美術館が現在改修のためメイン処の印象派の作品が来日するということで、喜び勇んで出かけた。印象派・ポスト印象派の作品に絞ってはある(ロンドンのコレクションにはルネッサンス期以前からの作品も少なくなかったはず)ものの、マネ、セザンヌ、ルノアール、ドガなどのお宝の作品と再会し、歓びの時間を過ごすことができた。
とりわけ、マネの《フォリー=ベルジェールのバー》は相変わらず不思議な作品だ。正面から描かれたモデルとその後ろの鏡に映った像との不自然な構図や、モデルの美しさともの思いに耽るような表情のアンバランス。劇場のバーのざわめきが周囲からは聞こえるが、そのカウンターの内側は音が遮断され、見えない空気の壁があるような独自空間。飽きることのない絵である。
展示の仕方も工夫がされている。絵の「読み解き」をキーに「画家の言葉から読みよく」「時代背景から読み解く」「素材・技法から読み解く」と、様々な鑑賞手法をパネル等も用いながら、見せてくれる。
金曜日の夜間開館を狙って訪れたが、その時間帯としては経験のない混み方だった(とはいっても鑑賞に支障が出るような類の混み方ではない)。会期終了が近づいて居るからかもしれないが、12月15日までなのでまだの人には是非、お勧めしたい。
2019年11月29日訪問