
発刊時(2014.3)いろんな本や雑誌で紹介されていて筆者とタイトルは知っていたのだが、なかなか読む時間がとれなかったがやっと通読。
印象に残っていることを幾つか抜き出すと、
・資本主義:「地理的・物理的空間の拡大」
・電子・金融革命は資本主義のフロンティアを垂直に伸ばした(膨張した)ものだが、リーマンショックで破裂して縮小
・グローバリゼーションとは、資本主義システムの「中心」と「周辺」の組み替え
・インフレ→価格革命→システム入れ替え→歴史の危機
・利子率=0%が資本主義の死
・フロンティアを失った資本主義は終わる
・資本主義は貧富の格差を拡大する方向に
・中産層の解体により民主主義の前提が崩れる
・中国は今までの先進国のようには発展しない
歴史的視点に立った現状の分析はなかなかアカデミックかつダイナミックであった。金融革命が垂直方向に資本主義空間を広げるものだったという説明は肚落ちする。経済学の学派については詳しくないが、読んでいると学生時代に読んだウォーラーステインの世界システム論の考え方や「中心」「周辺」といった従属理論の考え方を取り入れてあり、近代経済学というよりもマルクス的な香りも放っている。
一方で、歴史を踏まえた現状分析はあるものの、未来像については描かれてないことや、新書という形態のためか、分析の深みといった点で物足りなく同じ主張や説明が何度か繰り返し記述されているのも満足いかない。
そういった不足感はあるものの、世の中の動きを見る一つの視座を得られることは間違いない。
【目次】
はじめに――資本主義が死ぬとき
第一章 資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ
第二章 新興国の近代化がもたらすパラドックス
第三章 日本の未来をつくる脱成長モデル
第四章 西欧の終焉
第五章 資本主義はいかにして終わるのか