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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

スティーブン・レヴィ著 『グーグル ネット覇者の真実』  阪急コミュニケーションズ

2014-11-08 19:41:27 | 


 原題は"IN THE PLEX How Google Thinks, Works, and Shapes Our Lives"。PLEXというのはカルフォルニア州マウンテンビューにあるグーグルの本社ベイシュア・グーグルプレックスのことだが、Plexの英訳は「網」だからいわゆるインターネットの雄ということでWebとも掛けているのかも。内容は、グーグルの本社で何が起こっているのかを描くルポルタージュ。2011年発刊。

 700ページあるので、通勤時間しか読書の時間を取ってない私には、読み通すのにまるまる四週間もかかってしまった。が、全く長さを感じさせない面白さだった。

 グーグルの誕生から最近のフェイスブックとの競争に至るまでの内部の様子が、生き生きかつ生々しく記述されている。「初めてグーグル内を自由に立ち入ることを許されたジャーナリスト」である著者ならではのディーテルに富んだエピソードに満ちている。グーグルの起業前後からアドワーズ等の広告ビジネスを立ち上げ期ぐらいまでのエピソードは、過去に『ザ・サーチ』などで読んだことがあったが、グーグルマップ、中国への進出、フェイスブック対抗などの話は私にとっては新しく、雑誌・新聞等の細切れの情報としてではなく、まとめて同じ筆者からの視点で読めたのも良かった。改めて、如何にグーグルが如何に尖がった、特異な企業であるかが、痛いほど伝わって来る。私の常識にはとても入りきらない思考軸、空間軸、時間軸を持った会社である。

 逆に、情報を一手に握られてしまう怖さも感じざるを得ない。中華思想的なエンジニア絶対主義、テクノロジー主義も、どこかでとんでもない破たんを迎えるのではないかという漠然とした不安も残る。“Don’t be evil”という社是(?)を、本書を読んでなお信じ続ける人の良い読者はそうは居ないだろう。それでも、好むと好まざるにかかわらず、既に私たちは検索結果、表示される広告・ニュースなど、グーグルにコントロールされた世界を生きており、その依存度は今後、ますます高まる一方に違いない。

 内部への立ち入りを許されたジャーナリストであるが故か、筆者の記述は全般的にグーグルに好意的だ。それを割り引いて読んだ方が良いだろうが、グーグルという企業とその影響力を知るには絶好の一冊だと思う。
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