冬休みに読んだ「日の名残り」を早速DVD鑑賞してみた。
原作は心理描写、場面描写が優れていて、読んでいて映像が目に浮かぶようだったのだが、映画はそのイメージを全く損なうことなく映像化がされているのに驚いた。お屋敷の部屋、庭園、そしてそこに住む人、働く人々、原作が忠実に映像化されている。
原作は主人公であるイギリスの歴史的マナーハウスの執事スティーブン氏の仕事と恋の両方の物語に読めたが、映画ではスティーブンスと女中頭ミス・ケントンの成就しない恋に中心に置かれている。
原作では描ききれない映画ならではのプラスαもあった。ミス・ケントンにより近づくことができたことである。原作はスティーブンスの視点で書かれているので、ミス・ケントンについてはスティーブンスの目から見たミス・ケントンしか分からない。その点、映画はスティーブンス氏中心ではあるものの、より客観的に二人の関係性が描かれるので、ミス・ケントンのスティーブンスへの思い、いらだち、迷いがより理解できる。
そして何よりも、スティーブンス氏を演じるアンソニー・ホプキンスとミス・ケントン役のエマ・トンプソンの演技が素晴らしい。ホプキンスは抑制された仕草、表情の中で、主人公の品格ある執事を見事に演じる。実力派俳優の本領発揮だ。トンプソンも良かった。誇りある女中頭だけども、恋心を抱く男性には思いが交わらず、別の男性から求婚される女性としての複雑な内面を表現する。二人の演技は深く胸に残る味わい深いものになっている。
本作を未読、未見の方は、是非、原作と映画の両方の鑑賞を強くお勧めしたい。順番としては、原作→映画の方がより映画の理解が深まり、良いかと思う。
スタッフ
製作総指揮 - ポール・ブラッドリー
製作 - ジョン・キャリー、イスマイル・マーチャント、マイク・ニコルズ
製作補 - ドナルド・ローゼンフェルド
監督 - ジェームズ・アイヴォリー
原作 - カズオ・イシグロ
脚色 - ルース・プロワー・ジャブヴァーラ、ハロルド・ピンター(クレジット無し)
撮影 - トニー・ピアース=ロバーツ
音楽 - リチャード・ロビンズ
提供 - コロンビア映画
キャスト
ジェームズ・スティーヴンス - アンソニー・ホプキンス
ミス・ケントン - エマ・トンプソン
ダーリントン卿 - ジェームズ・フォックス
ルイス - クリストファー・リーヴ
ウィリアム・スティーヴンス(スティーヴンスの父親) - ピーター・ヴォーガン
カーディナル(ダーリントン卿が名付け親になった青年) - ヒュー・グラント
スペンサー - パトリック・ゴッドフリー
デュボン・ディブリー - マイケル・ロンズデール