冬休みに読んだ一冊。
イギリスの伝統あるマナーハウスに務める執事を主人公とした大人の仕事と恋の物語。平易な文章のなかに、味わい深い心理描写、環境描写が織り込まれており、深く胸に残る一冊だった。
イギリス人らしい(と私が勝手に思っている)良心的職業意識、対人感情の細やかさや配慮、そしてその発露の仕方が、さりげなく描かれており、古き良きイギリス人の魂を覗き読むような感覚になる。イギリスでもブッカー賞という権威ある賞を取ったということなので、イギリス人の胸にも深く刺さるものがあるのだろう。
読みながらイギリスの田園風景、マナーハウスの様子が頭の中で映像となって浮かんでくる文章力は素晴らしい。訳が上手いというのもあるのだろうが、原文で味わってみたいと思わせる文体やリズムがある。アンソニー・ホプキンスが主演して映画化もされているようだが、こちらの方も見てみたい。
普段、ビジネス書を中心にノン・フィクションを手に取ることが多く、小説に触れる時間はなかなか取れないのだが、小説の面白さ、楽しさを十二分に感じさせてくれる一冊で、本って良いなあとしみじみとした読後感が残った。
★★★★★