連休中に読んだ本です。随分と有名な本のようですが、恥ずかしながら、私には初めてでした。敗戦とともに満州から朝鮮半島を縦断して日本へ帰国した、日本人一家の記録です。筆者の藤原ていは、作家新田次郎氏(故人)の奥様で、数学者の藤原正彦氏(ベストセラーとなった「国家の品格」の著者でもある)は新田次郎氏と藤原てい氏の次男です。
凄まじい体験談です。赤ん坊を含めた幼い子供3名を連れての逃避行(特に第3章「魔王」)は、涙なしでは読めません。母として子供を守ろうとする強い気持ち、生きることへの執着、意思を行動に移す実行力と判断力らが、運を含めて、この一家に味方したのでしょう。
この本には、生死のギリギリまで追い込まれた、さまざまな日本人、日本人家族が描写されます。もちろん、利己的で卑しい人たちも居ます。しかし、恵まれた現代日本人の立場から、安易にこれらの人を批判することは難しいです。はたして、自分がこのような立場・環境に立たされたとき、どのような行動を取ることができるのでしょうか?
倫理として人間の尊厳、道徳、倫理感について読んで考えることと、また60数年前の日本のアジア・太平洋戦争敗戦の一コマとして歴史について考えること、いずれの読み方もできますが、日本人として一度は読んで、追体験すべき一冊です。