…ボクシングです。
もう4日も前のことになりますが小堀裕介選手が見事ライト級世界王座を奪取しました。それも3R見事な逆転ノックアウトで!
ライト級は世界の成人男性の平均体格に近い為、最も層が厚い階級のひとつであり人気が高い。そしてなによりヘビー級と並ぶ長い歴史を持つ権威ある伝統階級。ボクシングの本場ラスベガスなどが階級の権威というものにあまりこだわりをみせなくなった現在でさえ、ボクシングファンにとってはグッとくる響きを持つ特別な階級なのです。
支援者の奔走により急遽決定したこの試合、地上波でのテレビ中継は無し。CS放送のスカイAでのみ中継されました。僕はケーブルTV経由で録画しておいて深夜観戦。本当は行きたかった!
今更こんなことを言ってもなんですが…やってくれるんじゃないか?と思ってました。
といってもこれは予想が当たったというわけじゃなくあくまで、なんとなくという範囲の話。一般的には不利の予想だったようなのですが、実際に小堀選手の試合を観たことのあるボクシングファンのほとんどが「やってくれるかも」思っていたことだと思います。特にチャンピオン、アルファロ選手が打ち合う選手という情報を聞いて、小堀選手が倒すシーンを想像した人は多かったと思います。それだけ彼のここ数年の(特にファイタータイプとの対戦での)充実ぶりは印象的でした。真鍋圭太選手や大之伸くま選手を鮮やかに倒した試合は、これは!と思わせるに相応しいものでした。とはいえライト級の世界タイトル挑戦。多分に希望的観測色の強い予想だったとは思います。
そんな中、友人Hドタは当日にメールで「あいつは勝つ!」と明言しており眼識の確かさを示したのでありました。
1Rから前へ前へ出て、打ち合いながらカウンターを狙う小堀選手。相手の右を打たれる間に返すパンチの数が多い。コンパクトにカウンター気味にとらえる場面が早くも見られる。世界初挑戦の緊張感は微塵も感じられない。以前から感じていたことだけれど、この選手の図太さには改めて驚かされる。チャンピオンはかまわずロングパンチをまっすぐにねじ込んでくるタイプだ。2R、更に踏み込む。それは危険と隣り合わせ。いいパンチを受けバランスを崩したところでスタンディングダウンとられてしまう。どよめく場内。幸いダメージは小さい。どう乗りきるか?と思ったら、変わらず踏み込んでゆく。アルファロ選手は追撃を思いとどまらざるをえなかった。3R、ダウンを奪われた次のラウンドは試合を立て直しにいくかと思ったが、更に踏み込みパンチの回転を早める。いいタイミングでパンチが交錯する。危険をかえりみず前へ、といってもやみくもではなくコンパクトに狙っている。とはいえ流石にチャンピオンは巧い、上下の打ち分けを交え始めボディをしたたかに打たれる。顔面にも返される。顔面へのカウンターのみを狙っている小堀選手との引き出しの差が出てきたなぁと思い始めたその時。リング中央で右での崩しから素早くシャープな左フック一閃。チャンピオンは激しく倒れた。強烈なダウン。これは効いている。片膝を立ててカウントぎりぎりまで立ち上がらずに休もうとしているが、深刻なダメージからなんとか回復しようと必至で抗っているのが見てとれる。誰もがこれはいける!と思ったはずだが、それ以上に小堀選手本人が瞬時にそれを察していた。試合再開と同時にもの凄い勢いで仕留めにかかる。コンパクトで早くて的確だ。フラフラのアルファロ選手をとらえる。パンチで大きく身体が泳いだところでレフェリーがストップした。
…うわあ。獲ったよ。。。これが正直な感想でした。
坂本博之選手が4度挑んで手に入れられなかった世界ライト級王座。ジムの先輩、坂本選手の目の前で見事ワンチャンスをものにした小堀選手の姿になんとも言えない感慨を抱いたものでした。
歓喜に沸くリング上、場違いにもかかわらず存在を誇示するドンキングの禍々しさが、奪った王座の商品価値の高さを感じさせる。
ベルトを巻いた小堀選手の勝利者インタヴュー。ファンのお楽しみのひとつである。そう、ボクシングファンなら周知の事実、小堀選手は喋りが駄目なのだ。驚くほどにシドロモドロだ。昨今の饒舌なボクサーの中では決定的に異端に分類される。それゆえにインタヴューを楽しみにするファンは多い。試合後のリングに笑いが降り注ぐ光景はなかなかに新鮮だ。栄光の夜、それほどシドロモドロではなかったけれど、異常に落ち着いていてなんとも妙な空気を醸し出していておかしかった。この周りに左右されない、我が道感が彼の強さなのだろうとも感じた。そう空気を読んだりなんかしないのだ。そんなことより他にすることがあるのだ!この彼の佇まいはボクシングファンに大いに愛されている。
自身の過去の対戦相手で後に早逝した村上選手に触れ「自分が勝っていけば彼の名前も出る機会もあると思う」と語っているのを聞くにつけ後楽園ホールのファンの好感度が高いのもうなずける。作為的ではないんだね、これが。
そう、一般的知名度の低さなんか気にしなくっていいのだ!だってWBA世界ライト級チャンピオンなのだから。「もう、日本でなんか試合してあげないよーん」だっていいのだ。
…でも「家から近いところでやるのが楽でいいス」とか言いそうだなぁ~。
『勝っちゃいました』
世界チャンピオンになってしまいました
本当にびっくりです
ひさびさに緊張しました
というブログにも笑ってしまいました。
この日のスカイAのTV中継、地味にボクシングしていてなかなかに良かったです。地味すぎるという声もありそうだけどTBSなんかはちっとは見習えや!って感じです。
暗めのリング照明も南米での試合をWOWOWで観ているかのようでなかなか趣きがありました。…あああ、こんなこと言ってちゃ駄目だあ。
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