バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

ドクター・ジョンの新作『Locked Down』強~力な大傑作です!

2012-05-25 | 音楽

Drjohnlocked_down

すっかり紹介するのが遅くなってしまいましたが…バイユー店内ではもうすっかり今年屈指の傑作としての評価も定着しつつある1枚、『Locked Down / Dr John』です!
これは驚きの素晴らしさ、驚異の大傑作です!

(僕が知らなかっただけで)とても有名らしいブラック・キーズというバンドのダン・オーバックという人がプロデュースした(演奏、曲作りにも全面参加)本作。実は、事前に「ドクターがヴードゥーロックに回帰」というような評判を聞いても「ふーん」という感じでした。その理由はというと、個人的に最近のドクタージョンのアルバムにすっかりときめかなくなっていたからです。近年の彼のアルバムはどれもイイのですが、僕にとってはどれもそこそこ、で興奮!ということがまったくなくなっていたのでした。
モロニューオーリンズ路線、ロック路線、ジャージーな感じ、オールドファッションモノ。どれも「ああ、いいねー」という感じ。正直なんとなく物足りない、燃えない、という存在になっていたのでした。あの『ガンボ』で僕を一気にニューオーリンズ音楽に引きずりこんでくれた恩人であるというのに…。
ドラマーのエンタくんから「いいです。ヴードゥーロック、って感じですよ」と言われても「別にヴードゥーロックをそんなに聴きたくもないしなあ」という感じでした。

で、それからしばらくしてベースプレイヤーのタモツさんが持参した本盤を聴いたのですが…
もう冒頭から大興奮!音面の禍々しさ(こういう感じをヴードゥーロックというのかな?)と切れ味、いきなり引き込まれます。作り込まれたウッドベースの音をはじめとした独特のガレージ感には好みが分かれるかもしれませんが、僕は一気に気持ちを高揚させられました。勿論即購入!
とにかく音楽のマジックが溢れています。ドクターのニューオーリンズ・テイストを下敷きにした新しいリズム感覚。それに絡むギター!ルーツミュージックの常套句を全て飲み込んでぶっ壊してコラージュしたかのような新鮮なリフやオブリガードに、飛び込んでくる尖ったフレーズの絶妙の言語感覚には心から脱帽です。オールドスタイルに聴こえる管楽器にもひと捻りが有り、ありきたりにならない。ジングル的に挿入されるサンプリング音源のオールドジャズがいかがわしい空気とともに夜の街の深淵にいざなう。『St. James Infirmary』のメロディが出て来たと思ったら不似合いなぐらいの勢いでギターが切り裂きビート解釈を一変させる。とにかく聴き所満載。ドクターの歌詞を含めた語り口もワイルドで、サウンドとの一体感を感じさせます。とにかくこのダン・オーバックという人のセンスが素晴らしい、イキきるところはイキきり抑えるところは抑える。音楽のマジックを生み出すツボを知っているかのようです。
違うタイプの作品なので??と思われる方もいるかもしれませんが、僕はオル・ダラのファーストアルバムやロス・ロボスの『コロッサル・ヘッド』に驚き、聴き狂っていた時と似た感覚を味わいながら毎日のようにこの『ロックド・ダウン』を聴いています。ゴッタ煮感や切れ味が堪りません。本当に傑作です!

やっぱりドクターはニューオーリンズ音楽じゃなきゃという方には好みが分かれるのかもしれませんが、僕にとっては彼の長い長いキャリアの中で5本の指、いや3本に入る屈指の名盤登場!だと感じています。10曲というコンパクトさも名盤の顔をしています。72歳でリリースした強力な傑作、コーフンを隠せません。
最高です。


コメントを投稿