先日のボクシングLフライ級10回戦『佐野友樹vs井上尚弥』戦、井上選手が大物の片鱗を見せてくれました。正直、凄いと思った。確かに才能を感じました。
そして、戦前の予想以上に実力差があったにもかかわらず敗北を拒否して戦い続けた佐野選手も最後まで雑にならず丁寧に「ボクシング」を続け素晴らしかったです。相手の左を嫌というほど打ち込まれ簡単には右が出せない状況になりつつも、最後の瞬間までその右手はカウンターを窺っていました。実際に井上選手にダメージはまったく与えられなかったものの「試合を投げない選手に食い下がられる」という貴重な経験を彼に与えました。また井上選手は将来自分が強大な敵と戦い、逆の立場になった時のことも学んだのではないでしょうか。でもとにかく凄い若者です。右を負傷して左1本であれほどのボクシングをするとは…。試合前にも書きましたが、価値あるマッチメイクだったと思います。
そして改めて感じたのがテレビの功罪。地上波ゴールデンタイムというのは本当に凄い。敗れた佐野選手の姿への共感、反応の大きさには驚かされるばかりです。佐野選手、確かに素晴らしかったし、男を見せたと思います。でもプロボクシングの世界には他にも多くのドラマがあります。人の目に触れないだけ。ノンタイトルの前座試合でも背景や選手を良く知っていればとても冷静ではいられないような試合が多々有ります。
せめて大きな舞台での試合くらいは多くの人の目に触れて欲しいものです。先日の三浦選手の世界王座奪取やツニャカオ選手の挑戦なんて地上波ゴールデンで放送されていたら大きな反響を巻き起こした事でしょう。
そんなことを良く知っている佐野選手は完敗した試合での賞賛に少し戸惑っているかもしれません。
でも、近年はボクシングという素晴らしい競技を「あんなものなの?」と思わせるような輩がテレビ中継界ではのさばり、高い知名度を誇るという現状が続いていただけに。わかり易い強さだけではない、ボクシングの深淵をテレビを通して見せてくれた誇り高きボクサーに心から感謝したいと思います。
これが功罪の功。罪についてはネガティヴなことを言っても仕方ないので今回はやめておこうと思います。
最後に金メダリスト村田選手の公開プロテスト、これまた凄いものでした。流石としか言いようがない。前日本チャンピオンの佐々木選手はなす術がありませんでした。村田選手、本当にプロでやるんですね~。
このスパーリングについて、石田順裕選手がブログで「まぁ、金メダリスト相手に3ラウンドじゃあ どないしようもないでしょう。」と書いていて「深いなぁ~」と思いました。
そう。そんな世界で村田選手、そして井上選手もこれからトップレベルでやってゆくのですね。