バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

黒人はなぜ待てないか

2008-09-22 | 日記・エッセイ・コラム

「黒人はなぜ待てないか」。

勿論、チカーノだって待てないし。メキシカンだってジャパニーズやコリアンだってチャイニーズだって、誰だって待てやしないのだけれども。何より黒人は待てないとのことだった。
1966年にみすず書房から(翻訳本が)発行された公民権運動の父・マーティン・ルーサー・キング Jr(Martin Luther King, Jr)の著書のタイトルである。原題は『Why We can't wait ?』。045
キング牧師と呼ばれる彼は人種差別撤廃を目指し、アメリカ黒人の公民権を勝ち取るべく「非暴力主義」を掲げ闘った人物であります。
有名な「I have a dream…」の人です。
と、高名なキング牧師についてはこれくらいで…(もしあまり御存知ないという方がいらしたらお調べ下さい)。

ここのところ~自宅の本棚でこの本がなんとなく目につくのであります。そう、巷でいや、世界で話題のアメリカ大統領選挙のニュースを目に耳にする度に棚の上の方に窮屈に押し込められている小さなこの本がなんとなく目についてしまうのです。で、カバーを外しスキャンしてみました。

1966年4月、自分の生まれる数ヶ月前に発刊されたこの本を僕は20数年前、高知から上京した日に家賃2万2000円風呂トイレ無しのアパートを借りた世田谷区・経堂『西通り』の古本屋で購入したのでした。東京での一人暮らし!中古レコード屋も古本屋もあふれかえっている東京!西新宿のレコ屋街も(当時本気でそう思っていました)神保町の古本屋街も電車に乗りさえすればすぐに行ける。そこには山のようにレコードも本も揃っている。その上なんと自分のアパートのある街にも中古盤屋や古本屋がある!!最高だ!

ホームシックや5月病?もまったく無縁にお一人様道??を邁進する第一歩を踏み出したのでありました。そんな10代の終わりの日々のこと…やはりどこか激しく勘違いしていたのでしょう。記憶違いでなければ東京に着いたその日の午後、近所の古本屋に入り熟考しこの本を購入しているのです。定価480円を1000円にて購入。いったいナニがしたかったんでしょう??店内で鼻息荒かったんでしょうか??とても恥ずかしいです。黒人音楽狂いの(入り込んだばかりで熱かった!!)少年は何を何処で間違えていたのでしょう??まっすぐ歩んでいたら政治家、だったのでしょうか??

ありえません。この本をきっかけに書棚に政治的な本が大量に収められる、というようなことはまったくなく、レコード盤ばかりが増えていったのですから。そういえばこの本を買ったその夜は一人で原宿クロコダイルに『タンブリングス』(山口冨士夫のバンド)を観に行ったのでした。どういうスタートなんでしょうか?そんなのその気になれば毎月だって観られるのに…やはり舞い上がった田舎モンでしたねー。まあ今もあんまり変わらないのですが。

とにかくそんな大いなる勘違いとかもろもろを思い出させてくれる1冊、なワケです。

そして今回のアメリカ大統領選挙。
テレビで民主党のバラク・オバマ候補の姿を目にする度、いまだに信じられないような気持ちでまじまじと眺めてしまいます。
20数年前、この本を読んだり公民権運動について興味を持ったりしていた頃、知れば知るほどアメリカという巨大な社会での人種差別撤廃ということの困難さを強く認識し、そのわかり易い例として「どんなに黒人(エリートの)社会進出が進んでも自分達が生きている時代に黒人大統領誕生だけはありえないだろう」と言われているのを聞き大きく納得していました。それはその選挙の席に着くということも含めてです。しかし、現実は民主党を代表し合衆国を二分する候補として大統領選挙にオバマ候補が臨む日がもうすぐそこまで来ています。まさに隔世の感有り、です。急激に歯車が進んだだけという見方もできようかとも思いますが。アメリカ大統領となるであろう2人のうちの一人が黒人であるということはまぎれもない事実なのです。事実の持つ重みにクラクラしてしまいます。

オバマ候補、勿論命がけです。相当な覚悟だと思います。J党総裁選挙とはワケが違うのです。無事に選挙戦を戦うことも、そして勝つ事も全てが想像の範疇を超えています。
もし、アメリカ合衆国大統領となった場合でも『オバマ大統領』は彼を指示したリベラル派を中心とする白人層と、黒人大統領という言葉の響きに激しく期待する黒人層の両方に支持される政治を行うことができるのでしょうか?アメリカという国は思っている以上に巨大です。そう、彼は決して単なる新しい大統領とは見てもらえません。黒人初の大統領なのです。
とにかく彼がこれから歩む道の全てが、良い事も悪い事も含めこれまでにまったくサンプルのない新たな前例となっていくのです。どこまでいけるかに注目が集まります。選挙に勝つにせよ敗れるにせよ、身辺警護をしっかりとしてアメリカ社会に新たな一歩を示して欲しいものだと思います。

でもまさか20数年でこんな日が来ようとは…しかしだからといってアメリカ社会から人種差別が無くなっているというわけではないのですが…。

と、まあこんな風に日々ノホホーンと暮らしている元勘違い少年ですら注目してしまう今回の大統領選なのであります。日本の総選挙もおおごとなんですけどね。

最後にキング牧師の有名な演説の一節を
I have a dream.One day the sons of former slaves and the sons of former slave-owners will be able to sit down together.(私には夢がある。いつの日か、全ての奴隷の子達と、全ての奴隷の所有者達の子達が、席を並べられる事を)

以上、たまには真面目に、、、ではなくて思いつくままに書いてみました。