咲とその夫

 定年退職後、「咲」と共に第二の人生を謳歌しながら、趣味のグラウンド・ゴルフに没頭。
 週末にちょこっと競馬も。
 

小説「のぼうの城」・・・著:和田竜

2012-12-13 22:41:33 | レビュー
 11月早々、映画化された「のぼうの城」を観賞、既にブログにも掲載している。通常であると、原作を読んでから映画化されたドラマを見ることが多いが、今回は映画を観たあとでこの本を購入。

 和田竜氏の小説は「忍びの国」を読んでいたが、自分の中ではちょっと読みづらい小説と思いつつ・・・読み終えた記憶がある。どこが、どうなのか、うまく言えないが、登場人物のものの言い方がしっくりこなかったと思っている。

 余りにも池波小説の人物の描き方が、素敵で気に入っているからかも知れない。その池波小説とついつい、比較しているのかも・・・。

 それは、別として今回の小説「のぼうの城」、大ベストセラーになっているとのことでもあり暇を見つけては読み漁り、先般やっと完読。この小説は、映画の脚本がベースになっており、それを基に小説化されたとのこと。

 ページを捲りつつ、読み込んでいくと映画のシーンが再三よみがえる。通常であると小説を読みながら、読者の方が次々と書き込まれている情景を思い浮かべながら読み進め、次はどうなるのか・・・。

 など、想像しながら読むが、この小説の場合、映画の場面が順序立てて出てくるものだから・・・うーん、困ったな。ナーンテ、思いつつも、それはそれで楽しいと切り替えた。

 また、歴史の資料から、例えば秀吉が小田原攻めを決意した敵方の武将・北条一族の系図はどうであるかとか。さらに忍城(おしじょう)を守る成田氏の系図とその城の位置・・・など、簡潔明瞭に書き込まれており、歴史を少しでも知ることができる点はいいと思いつつ読んでいた。

 ところで、読み進むうちにあの役者さんは、この場面でこのように演じていた。ここは、こうであると思うけど、そのような演じ方もあるのか。とに角、不思議な感覚になりながら、ページを次々と捲った。(ちょっと、生意気な言い方・・か)

 主人公である成田長親、「のぼう様」と百姓や小者からも親しみを込めて呼ばれており、その長親、小説の中では大男と書かれていた。

 「長親は図抜けて背が高い。脂肪がのっているため横幅もあり身体つきは大きいが、容貌魁偉(ようぼうかいい)であるとか、剛強であるとかいった印象を一切ひとに与えなかった。ただ大きい」

 と、表現されており、まさに「木偶の坊」、だから誰からも「のぼう様」と呼ばれている・・・とある。

 さらに、長親は百姓たちと田んぼで戯れ、田植えなどを手伝うが生来が不器用なもので、「のぼう様」が植えたあとを百姓たちがもう一度植え直すらしい。

 それでも、長親は百姓たち皆から愛され、慕われている・・・。

 忍城(おしじょう)における豊臣方との戦になった際、

 「のぼう様が戦(いくさ)するってえならよう、我ら百姓が助けてやんなきゃどうしようもあんめえよ。なあ皆」

 と、多くの百姓たちから、「のぼう様」が困っているなら何とかしてやらねばとの強い気持ちがある。

 小説に描かれている大男の「のぼう様」、映画で演じた野村萬斎さんは、風貌は真反対であるから、この役は自分ではないと小説を読んで思っていたらしいが・・・オファーがあって驚いたとか。

 ところが、野村萬斎さんは、これ以上ないハマリ役になっており、いくら不器用な大きな男と表現されている行間を読んでいても、萬斎さんが浮かんでくるから不思議である。

 石田三成を総大将とし、大谷吉継、長束正家が補佐した2万3千余の軍に囲まれたが、忍城(おしじょう)の城主・成田氏長は、総勢の半数の5百の兵を率いて北条方の小田原城に入城している。なお、氏長は秀吉の家来・山中長俊を通じて、北条方を裏切る手筈であった。

 この山中長俊について、池波小説「真田太平記」では、秀吉のお伽衆の一人で、甲賀二十一家の山中大和守俊房の従弟となっている。そして、最後は家康の為に働いている山中大和守俊房の命により、家康方の甲賀忍びとして働くよう描かれている。

 さて、物語の方、開城と決していた忍城(おしじょう)の城方であったが、秀吉の命を伝えにきた長束正家の態度が、余りにも慇懃無礼であったことに反旗を翻した「のぼう様」(長親)は戦を決意するから・・・さあ、大変。

 しかし、城方の兵は、5百である、相手方は、2万3千人・・・ここは、城代の「のぼう様」(長親)の一世一代の大戦(おおいくさ)。最後には、水攻めまで行った石田三成が、敗れるものだから、史実といえども摩訶不思議なことである。

 この負け戦で、石田三成は「戦下手」と呼ばれるようになり、「関ヶ原」の負け戦にまで尾を引くこととなった・・・との後世の評価がある。

 坂東武者恐るべし、成田長親・のぼう様恐るべし(夫)



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コメント
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