マジョルカピンク

水曜どうでしょう。大泉洋。大谷翔平。大好き

週末

2008-06-21 22:57:41 | どうでもいい話
昨日夜更かししててたまたま見ていたドラマが面白かった。「ビヨンド・ザ・ブレイク」だって。ビバヒルみたいな話かと思ったら、サーフィンに青春を賭ける女の子たちの群像劇って感じで冒頭ちょっと見てすぐ内容の面白さに引き込まれた。韓国ドラマといい海外のドラマって力があるよなあ。

今日は午後から姪っ子が遊びにきました。パソコンで遊ぶのが好きな子で、ずっとシルバニアファミリーやリカちゃんやプリキュアのサイトでできるゲームに興じていました。リユックサックにお人形を入れて持ってきたので、おままごともしたり。幸せ~な時間。

夕方姪っ子と入れ替わるように友人Kさんがきのとやのチョコレートケーキ持参で訪問。
しばしKさんの恋愛話で盛り上がる。私自身はしばらく恋愛に縁がない人生だけど、人の話を聞くのは大好き。絶対幸せになってほしい。

書店でロングセラーになっている矢口敦子氏の「償い」を読む。文章が平易で読みやすく、人物描写が巧みでストーリーに入っていきやすい。この傷ついた人々に対するあたたかい眼差しは宮部作品に通じるものがあり、殺伐とした現代社会の病理を炙り出しているにもかかわらず、じんわりと感動してしまう。上質なミステリーでした。


きのね

2008-06-21 01:33:20 | 
宮尾登美子氏の代表作のひとつ、「きのね」を読み終える。
貧しい塩焚きの家に生まれ、のちに歌舞伎役者の屋敷に奉公にあがった光乃という娘の一代記。
この主人公には実在のモデルがいる。戦後、天下の美男子、不世出の人気役者として海老さまブームを巻き起こした十一代市川団十郎の夫人その人である。現在の市川団十郎氏のお母様で、海老蔵氏のお婆様にあたる人だ。
当代きっての人気役者の奥様を偶然グラビアで見たとき、あまりに地味で慎ましやかな女性だったのが印象的で、団十郎夫人のことを書いてみたいと思ったのが、この作品を書くきっかけになったのだと対談で作者は述べている。

歌舞伎の世界には正直いって興味もなく、演目も一度も見たことがないのだけれど、以前スマステか何かで歌舞伎特集をやったときこの「海老さま」のことを取り上げ、芸といい人気といいとにかく破格の役者であったというくだりが印象に残っていて、「え、その人の奥さんて元は女中さんだったのか」という意外さで興味を持ち読み始めたわけです。

いやーとにかく面白い。一気に読んでしまった。
海老さまこと幸雄はいわゆる天才肌というか、類まれなる美貌と素質はあったけれど融通が利かず何事も不器用で、しかもかんしゃくもちで、今で言うならすぐに奥さんに手を上げるDV夫だ。若いときは歌舞伎の世界のしきたりしがらみもありなかなか芽が出なかったが、この難しい幸雄をひたすら忍の一字で陰ながら支え励まし続けたのが女中の光乃。光乃は特別美人でもなくなにごとも控えめ、幸雄との関係も恋人、夫婦になってからも昔からの主従という関係にこだわり続け、どんなに辛く当たられてもひたすら耐えること耐えること、まったく頭が下がる。やっと奥さんとして周囲に認められたのは長男が小学校へあがるぐらいの年のころ。それまではとにかく忍従の日々なのである。
なんというか本来ならあまり好きなタイプの女性ではないはずなのだが、光乃はただ耐え忍ぶ女性とはちょっと一味違うような気がする。身の程知らずと知りながら、決して諦めることなく思いを胸に秘め、恋を成就させた芯の強い女性だ。周りには芸者やらファンやら美しい女性の取り巻きがたくさんいたのに、幸雄が光乃を選んだのもわかる気がする。頭が良く、気が利き、優しく、料理、裁縫、家事全般をなんでもそつなくこなし、決して逆らわずひたすら励まし支えてくれる。理想的な妻なのだ。見た目とかじゃないのである。いや、天才的な役者だからこそ光乃の内面の美を感じることができたのかもしれない。

昭和40年56歳の若さで病でこの世を去った海老さま。そのすぐあとを追うように光乃も亡くなっている。
傍目から見れば不釣合いな夫婦だったかもしれないが、互いにとってはかけがえのない存在。唯一無二の存在であった二人。夫婦とは、なんてことを柄にもなく考えてしまった作品です。
ちなみに「きのね」とは舞台が始まる前に打つ合図の拍子木の音のこと。生まれてはじめて歌舞伎座の楽屋でその音を聞いたとき、光乃はその鋭く冴え渡る響きに天からの合図のように聞こえたという。これぞまさしく天啓。