マジョルカピンク

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蟹工船の時代

2008-06-12 00:02:51 | 政治・時事
やっぱり今週はこの事件に触れなきゃなと思います。秋葉原で起きた連続殺傷事件です。
まず一報を聞いたとき、またかと思ってしまった自分がちょっと、なんだかなあと思います。
その後7人死亡と聞いて震えましたけど。
あまりに身勝手な犯行で同情の余地もないのですが、あるサイトで犯人本人の書き込みと思われる文章をまとめて読んで、なんとも暗澹たる気持ちになりました。携帯サイトの掲示板?なのでしょうか、私ほとんど携帯のネットを利用しないのでよくわからないのですけど、事件を起こす前の6月5日あたりの書き込みがもう異常。5分おきぐらいにその時その時のネガティブな心情をありのままものすごい回数投稿している。絶望的な気持ちで書いた文がさらなる絶望を呼ぶようにどんどん落ち込んでいくさまは見ていて息苦しくなるぐらいだ。
この人、誰かと話がしたかったんだろうな。

甘っちょろいとも思うし、自意識過剰だとも思う。でもやることなすことうまくいかなくて、自暴自棄になってしまうという気持ちは誰にでも経験があると思う。
私からみれば25歳なんてまだまだ人生のスタートラインだと思うんだけど、今の世の中では若い人は夢を描けないというのも、わかる気がする。
でも怒りの矛先が完璧に間違ってるのだ。刃物を向けるべき相手は秋葉原にいる人たちではない。多分自己中心的で想像力に欠ける彼には、休日アキバに集うような人たちは悩みもなく幸せな人たちに見えたんだと思う。実はそこにいる人たちも多くが悩みを抱え、抑圧されながらも精一杯生きていた人たちだったと思うのに。
「誰でもよかった」といって大勢の人を襲い、社会に復讐したつもりなのかもしれないけど、そんなやり方では自分自身はもちろん今絶望している人たちをもさらなる絶望に追いやるだけだ。
本当に復讐すべき相手は、ゲームが悪い、ネットが悪い、オタクだから、ナイフが、などと的外れなことばかり言っている。
弱い者たちが夕暮れ/さらに弱い者を叩く/その音が響き渡れば/ブルースは加速していく-というブルーハーツの歌詞を思い出してしまう。

「おい!地獄さ行(え)ぐんだで!」という有名な言葉ではじまる小林多喜二の「蟹工船」が今バカ売れだという。本当かよと思い書店へ行ってみたら実際にたくさん平積みされており、文庫本の売り上げランキングにもランクインしている。昭和レトロな当時のままのカバーデザインもいい。私も購入してみた。エンターティンメント性の強い小説は好きだけど、プロレタリア文学なんてまるで興味なし。は作品の内容は学校の授業で知ったような気がするけど、暗そうなお話に全く興味が湧かず、作家本人については特高に拷問されて亡くなった悲運の人という印象があるばかり。
ただ以前名画座で見た昔の映画はなかなかの出来映えだったと思う。
まさか小林多喜二も80年たって再び「蟹工船」が脚光を浴びる世の中になるとは思いもよらなかったと思う。まだ読み始めたばかりだけど、この小説に描かれている世界は現代そのものだという気がする。プロレタリアート(労働者階級)を超えてプレカリアート(雇用不安定労働者)に注目が集まっているのも現代だ。「蟹工船」が売れ、マルクスが読まれ、連合赤軍が見直されつつある今年、やはり異常で深刻な世の中だと思う。