聖金曜日にきくのは「マタイ受難曲」(BWV244)。多数の録音の中から選んだのは、ニコラウス・アーノンクールが1970年に録音したアルバムで、いまから第1部をきき、そして夕方に第2部をきいていく予定です。アルバムは、ピリオド楽器のオーケストラ(ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス)と男声のみの歌手によるはじめての録音。そしてアーノンクールはじめての「マタイ受難曲」です。
ソプラノの独唱はウィーン少年合唱団員、ほかの独唱は成人の男声。合唱のソプラノはレーゲンスブルク・ドームシュパッツェン(レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊)、アルト、テノール、バスはケンブリッジ・キングズ・カレッジの成人合唱団員。これにそれぞれの合唱団の指揮者が3人という、いまなら特別なイベント以外考えられないような混成団体での録音となっています。
逆にいえば、この録音そのものが複数の団体や独唱者たちを糾合しなければならないほど、特別な意味をもつイベントであったといえるかもしれません。録音におけるアーノンクールの個性はまだ薄く、後年のような表現の陰影は少なめ。この歴史的録音のアプローチがより高いレベルで結実したのが、およそ20年後、1989年録音のグスタフ・レオンハルトたちの「マタイ受難曲」です。
CD : 2292-42509-2(TELDEC)