バンジャマン・アラールの演奏できいてきたトリオ・ソナタ。これからきくのはト長調の第6番で、このBWV530は「世俗的な親しみやすい筆致で綴られたソナタ」(『バッハ事典』)。アラールの演奏は、若さにまかせたところがなく、気負ったり、趣向を凝らしすぎることもなく、どれもすがすがしいもの。そして、ピリオド奏法の成果はじゅうぶんとりいれているものの、伝統的な、教会のオルガン奏者としての道をはずすところがありません。
「DHMとSeonレーベルのレオンハルトによるバッハの作品の集成」(「私的CD評」)で紹介されている、レオンハルトの若かりしときとは、とりまく状況がおおきくことなっていることも、アラールの演奏に影響をあたえていると思われます。いまは、より自然体で、構えなく音楽や楽器にむきあえるようになり、アラールたちの世代の演奏家は、とても幸せだといえるかも。もっとも、それが苦労のはじまりと、いえなくもないわけですが。
CD : Alpha 152(Alpha)
Alphaレーベルで活躍してる演奏家の多くは、新しい世代に属しているように思います。レオンハルト、クイケン兄弟、ブリュッヘン、ハルノンクール達を第1世代とすると、ピエール・アンタイ、アンドリュー・マンゼ等が第2世代、カフェ・ツィンマーマンのメンバーやアラール達は、いわば第3世代と言えるように思います。古楽器を用いながら、奏法やテンポ設定に時代様式を反映させること無く、自由に演奏しているように感じられます。その点が、彼らの魅力と私には思えます。
新世代の演奏家たちは、ogawa_jさんのいわれるように、かつてにくらべると、より直感的に演奏しているように思えます。その一方、より専門的な領域で、より厳密に過去に忠実な演奏をする若手もいますね。古楽のなかでも多彩な演奏が楽しめる、おもしろい時代になってきました。