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アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

「W値65」こそ基準に ―学校空調維持費補助について

2016年09月13日 | 小松基地(騒音、訴訟)
小松に静かで平和な空を
「W値65」こそ基準に ―学校空調維持費補助について


はじめに
 2015年度に空調維持費を補助した基地周辺の施設(学校など)は全国に262施設があり、そのうち沖縄は108施設である。金額では、全国で3億1700万円で、沖縄は2億1800万円(約7割)を占めている(2016.7.27「北陸中日新聞」)。この数字を見るだけでも、米軍・自衛隊基地による騒音被害がいかに沖縄に集中しているのかがわかる。
 空調維持費補助は各施設(公共・民間)が防衛省に申請し、国が第1級から第4級、そして等級外を決定している。すなわち空調維持費補助を申請した各施設(学校など)で、防衛省が騒音調査をおこなって、「防衛施設周辺防音事業補助金交付要綱」(資料1)に基づいて補助金支給の要否を決めているのである。
 すなわち、補助金が支給されている施設では航空機騒音が教育環境を破壊し、同時に周辺の市民生活の妨げになっていることを、防衛省自らが認めているのである。

 資料1


主として、小松市の実態
 加賀市、能美市、川北町、白山市の資料はまだ入手出来ていない(10/9が開示期限)ので、小松市立の小・中・高校及び石川県立の高校、支援学校について整理する。
 2006年度版『基地と小松』(小松市発行)には、「1973年度より行政措置として交付されている補助金で、小学校、中学校、保育所において換気、温度保持、湿度の各設備を使用したことにより、必要とした年間の電気料金、ガス料金または燃料油の代金に3分の2を乗じて得た額の範囲内の額が補助金として支給されている。また2002年度より高等学校にも支給されている」(105p)という記述がある。
 2015年度版『基地と小松』に掲載されている「防音事業関連維持費」の各年度の施設数と金額の一覧表をみると、1973年度は21施設288万3000円、1980年度は46施設2474万8000円、1984年度は35施設3146万2000円、2005年度は35施設2849万2000円、2014年度は28施設1929万3000円となっている。
 1984年度からは、石川県関係として1施設58万円、2005年度は14施設2132万8000円、2014年度は14施設2135万8000円となっている。

小松基地周辺には約100校
 まず、小松基地騒音コンター(WECPNLうるささ指数)を〈75W以上>、<70W~75W>、<70W以下>に3区分したいところだが、行政は<70W>を公表していないので、便宜的に、<(A)75W内>、<(B)75W~2㎞内>、<(C)75Wから2㎞外>に3区分してみた(資料2)
 小松基地周辺(地図上)には約100校の小学校、中学校、高等学校、支援学校、大学があり、<(A)75W内>は29校、<(B)75W~2㎞内>は20校、<(C)75Wから2㎞外>は51校である。

 資料2


空調維持費補助対象施設
 小松市飛行場課が提示した「空調維持費補助対象施設一覧」(2015年度・資料3)には、芦城小、稚松小、犬丸小、荒屋小、向本折小、日末小、芦城中、丸の内中、安宅中、板津中、苗代小、今江小、串小、符津小、月津小、能美小、松陽中、蓮代寺小、木場小、矢田野小、国府小、東陵小、南部中、国府中、安宅小、御幸中、第一小学校の27校がある(注:安宅小、御幸中、第一小学校は太陽光発電施設設置のための補助金を防衛省から受けているので除外されているが、ここでは加えて27校と計算する)。
 石川県教育委員会が開示した「補助金等金額確定通知書」(近畿中部防衛局作成・資料4)によれば、大聖寺実業、大聖寺、加賀、小松商業、小松工業、小松、小松明峰、寺井、翠星、加賀聖城、小松北の各高校、錦城特別支援学校(小・中)、同(高)、医王特別支援学校小松みどり分校の14校が防衛事業関連維持費を受け取っている。

75W境界の外側(B,C)でも騒音被害
 空調維持費補助金を受け取っている上記41校をA,B,C別にしてみると、(A)安宅小、芦城小、稚松小、犬丸小、荒屋小、向本折小、日末小、芦城中、丸の内中、安宅中、板津中、御幸中、小松北高、小松高、小松明峰高、寺井高、医王特別支援学校小松みどり分校の17校、(B)苗代小、今江小、串小、符津小、月津小、能美小、第一小、松陽中、小松工業高、錦城支援学校(小・中)、同(高)の11校、(C)蓮代寺小、木場小、矢田野小、国府小、東陵小、南部中、国府中、大聖寺実業高、加賀聖城高、大聖寺高、加賀高、小松市立高、小松商業高の13校となる。
 防衛省が各学校の申請に基づいて、騒音調査をおこなった結果、75W内(A)の17校はもちろん75Wの外側(B,C)の24校に空調維持費補助金が支払われており、第2級~4級の基準(資料1)を超える騒音が発生し、学習に支障を及ぼしているという結果が現れたのである。

障害防止工事の助成
 また、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」第3条(資料5)にもとづいて、防衛省は「障害防止工事の助成」をおこなっている。『基地と小松』を見ると、小松市域内の75W内(A)16校はもちろん、75Wの境界の外側(B,C)18校にもさまざまな整備助成がおこなわれている。

W値65を基準に
 上記のように、防衛省は75Wの外側にまで騒音被害が及んでいることを認め、学校施設整備費や空調維持費を補助しながら、住民への騒音被害を認めようとしていない。
 小松基地爆音訴訟・第1・2次訴訟(1975年提訴)の1994年控訴審判決では、80W以上の被害を認めたが、75Wは受忍限度内として、騒音被害を認めなかった。第3・4次訴訟(1995年提訴)の2007年控訴審判決で、ようやく75Wの騒音被害を認めた。40年間のたたかいの結果である。
 しかし、環境基準は「住宅の用に供される地域である類型ⅠにおいてはWECPNL70以下」と定められている。さらに、航空機騒音による日常生活の妨害、住民の苦情などがほとんど現れない望ましい値として、NNI35(65W)が設定されている(資料6)
 基準W値75は科学的な調査結果から導き出された基準ではないにもかかわらず、判決ではW75以上の騒音被害を認めたが、それ以下の被害を認めなかった。航空機騒音による日常生活の妨害にならない「W値65」をこそ基準にして問題を立てるべきである。

2011年服部調査でも
 他方、2011年に実施された服部調査でも、基地周辺住民には戦闘機騒音を原因として、精神疾患、不眠症、睡眠妨害、生活妨害、子どもの問題行動、低出生体重などの健康被害がでている事をつきとめ、その被害は激甚騒音地域に限らず、W70地域にも及んでいることが明らかにされた(2015年3月23日、第5・6次小松基地爆音訴訟口頭弁論)。
 まづ、精神疾患について、GHQ28テストがおこなわれ(6点以上の場合は90%以上、12点以上になると100%の確率で精神疾患が現れる)、小松基地周辺で6点以上の割合は非騒音地域=29.3%、W 70地域=38.8%、W75地域=31.4%、W80地域=45.9%、W85地域=41.8%となり、騒音の大きさに正比例して、6点以上の割合が増えている。
 次に騒音レベルと不眠症について、アテネ不眠症尺度を使って調査(6点以上では不眠症の疑い)し、小松基地周辺の6点以上は<非騒音地域=1.0>、という結果になり、騒音の大きさに正比例して不眠症の人が増えている。

小松基地爆音訴訟の勝利へ
 以上のように、防衛省の調査でも、医学調査でも、75W境界線の外側の騒音被害が事実として確認されており、第3・4次訴訟判決の「75W以上の被害」認定はまったく不十分である。小松に静かで平和な空を取り戻すまでたたかおう。

資料3      資料4
      

資料5:「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」
(障害防止工事の助成)
第三条
2 国は、地方公共団体その他の者が自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施その他政令で定める行為により生ずる音響で著しいものを防止し、又は軽減するため、次に掲げる施設について必要な工事を行うときは、その者に対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その費用の全部又は一部を補助するものとする。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校
二 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院、同条第二項に規定する診療所又は同法第二条第一項に規定する助産所
三 前二号の施設に類する施設で政令で定めるもの

資料6 小松基地騒音差し止め訴訟 1審原告ら最終準備書面(控訴審)1994年
(233ページ~抜粋)
 環境基準は、一定の基準以上の騒音の曝露による侵害があれば、住民にたいし日常生活において看過し得ぬ生活妨害や不快感のみならず、健康被害を生ぜしめるとの科学的根拠により、基準値を、専ら住居の用に供される地域である類型ⅠにおいてはWECPNL70以下、Ⅰ以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域である類型ⅡにおいてはWECPNL75以下とするよう定められたのである。
 しかしながら、W値を70あるいは75としたことについては大きな問題があるものなのである。すなわち、騒音による健康被害、生活妨害に関する内外の科学的調査結果や文献資料などに基づいて、航空機騒音による日常生活の妨害、住民の苦情等がほとんど現れない望ましい値としては、まずNNI35(W値に直せば65)が設定されたものの、エンジンの製造が外国に依存していることや航空機騒音の影響が広範囲に及ぶことなどの騒音低減の困難性、さらに輸送の国際性や安全性等の種々の制約があることを総合的に考慮して基準値が引き上げられ、NNI40を基準値としてこの値に相当するW値として70(専ら住居の用に供される地域)が導き出され、また一般騒音に係る環境基準における地域類型別の基準値に対応してW値75(通常の生活を保全する必要がある地域)が設定されたということである。
 この経過からすれば、右基準値設定にあたっては、純粋に科学的調査研究結果からだけでなく、現実的政策的考慮が加味されていることは明白であり、…。




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