■The Allman Brothers Band At Fillmone East (Capricorn)
既にしてロックの殿堂入りは確実の名作ライプ盤ですが、これに出会った頃の衝撃度は青春時代のサイケおやじには、後頭部を殴れたような!?!
それは昭和46(1971)年のちょうど今頃の季節でした。
ラジオの洋楽番組で聴いた「Statesboro Blues」は、このアルバムに収録された名演のひとつだったのですが、イントロから炸裂するハードなリフと強烈なスライドギター!
なんじゃ、こりゃぁ~~~!
と、ほとんど松田優作状態の叫びが、思わず口から発せられた記憶も鮮烈です。
度々述べているように、その頃の私は既にスライドギターが大好き人間でありながら、それにしても当時はストーンズのブライアン・ジョーンズか、ライ・クーダーぐらいしかロック系のギタリストは知りませんでした。
と言うよりも、スライドギター奏法がロックの世界では一般的じゃなくて、もちろん本物の世界だった黒人ブルースのレコードにしても、我国ではアルバート、フレディ、そして B.B の三大キングか、ストーンズ経由で知られていたマディ・ウォーターズやウリン・ウルフあたりの編集盤ぐらいしか出回っていませんでした。
またオールマン・ブラザーズ・バンドが聞かせていたブルースロックにしても、それまでのクリームやフリートウッド・マック、そして同系のイギリスのバンドやアメリカでのサイケデリックから派生したグループの演奏とは、決定的に違う何かが、この1曲だけで感じられたのです。
さらに大衝撃だったのは番組の中で、このスライドギターを弾いていたデュアン・オールマンがバイクの事故で同年の10月、つまり私が放送を聴いた直前に他界したという悲報を告げられたことです。
あぁ……、こんな凄いギタリストを、もう聴けないなんて……。
出会いは別れの始まり……、とは本当の名言だったんです。
そして、もうこうなると辛抱たまらん状態のサイケおやじは、「Statesboro Blues」が収録された本日ご紹介のライプ盤をゲットする覚悟を決めたのですが、それはなんと2枚組で、日本盤は三千円!! これは当時、高校生だった私には苦しいものがありました。
しかし青春の情熱というか、憑かれた執念は物凄いエネルギーを発揮するものです。それこそ昼飯代を倹約しまくって、日本盤よりも安かった輸入盤の中古をゲットしたのが、掲載したアルバムです。
A-1 Statesboro Blues
A-2 Done Somebody Wrong
A-3 Stormy Monday
B-1 You Don't Love Me
C-1 Hot 'Lanta
C-2 In Memory Of Elizabth Reed
D-1 Whipping Post
くぅぅぅぅ~、このアルバムを聴いた時のリアルタイムの衝撃は、再び凄いものがありました。
当時のバンドメンバーはデュアン・オールマン(g) とグレッグ・オールマン(vo,key) の兄弟を中心にディッキー・ベッツ(g)、ベリー・オークリー(b)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェイ・ジョニー・ジョハンスン(ds.per) という6人組で、当時としては画期的というか、2人のドラマーがいるバンドは珍しい編成でした。
そしてこのアルバムは1971年3月、ニューヨークのフィルモア・イーストで録られた音源から編集されていますが、あらかじめライプレコーディングを想定したセッションには、ゲストプレイヤーも参加しており、ここでは特にハーモニカ奏者のトム・ドューゼットの名演も楽しめます。
しかし圧巻なのは、やはりデュアン・オールマンの神業ギター!
ド頭に入っている「Statesboro Blues」の物凄いスライドは、そのリズム感、音とフレーズのコントロールが神の領域に近づいているとしか思えないほどです。しかも豪快無比!
さらにブルースロックの神髄というか、「Stormy Monday」での強靭でハードなアドリブや「You Don't Love Me」で炸裂する瞬間芸的な閃きの連続を聴いていると、う~ん、これは天国へ召されるのも神様の思し召しとしか思えなくなるのです。
また、そうした凄みを遺憾なく発揮出来るのも、バンドメンバー各人の技量と纏まりが素晴らしいからでしょう。しなやかで粘っこく、さらに強いビートでキメまくりのリズム隊はツインドラムス体制の成果でしょう。
と同時に、デュアン・オールマンとディッキー・ベッツがバンドアンサンブルのキメに演じるツインリードのパートは、長いアドリブソロの中で何時しか浮かんでは消えていく素晴らしい瞬間を見事に演出しています。特に「In Memory Of Elizabth Reed」で聴ける3度のハモリとバッキングは最高過ぎますねぇ~♪
こうしてデュアン・オールマンの虜になったサイケおやじは、この天才の過去を探求するにつれ、ますますその凄みに圧倒されるのです。例えば、このアルバム以前に出ていながら、同好会バンドの先輩から聴かせてもらったまま、なんとなく忘れていた「レイラ」の2枚組も、あわててゲットしたほどです。
デュアン・オールマンのプレイは、スライド奏法でもレギュラーチューニングが多いようですし、単音アドリブでも3連&6連のフレーズを多用していますが、特有の浮遊感と閃光の瞬間的な至芸は、どうやらモードジャズの影響も含んでいると感じることが度々です。
実際、オールマン・ブラザーズ・バンドとしてのライプで演じられる長いアドリブ合戦、あるいはバックアップのコードワークが、一筋縄ではいきません。
同じ傾向としては、これ以前のクリームが非常にジャズ寄りの演奏でしたが、それはメンバー各々が喧嘩をしているようなところがありました。ところがオールマン・ブラザーズ・バンドは、なかなか協調性があって、グループとしての表現も秀逸だと思います。なんと言うか、柔軟に盛り上がっていく、これはグルートフル・デッドあたりのライプ演奏にも通じるものがあると感じます。
ということで、デュアン・オールマンを知ってしまったサイケおやじは、なんとか天才の技をコピーしようと奮闘したのですが、当然ながら足元にも及びません。
しかし、こうしてデュアン・オールマンに出会えた幸せは、今も忘れていないのでした。
買って聞き倒してる最中、これのアウトテイク集的なものがあるとの情報を得て、そのイート・ア・ピーチまで買うハメになったのというのは、なりゆきとしては当然でしょう今考えると。しかし貧乏高校生にとっては、大人がマンション買うほどの清水の舞台っぷりでしたな。
スライドギターといえばこのデュアン、マーシャルからの超極太ドライビング豪快サウンドが自分の中でのスタンダードとなってしまいましたゆえに、ブライアンやブルームフィールドのスライドは、テケテケしょぼくてオヤスミ前のBGMくらいにしか聞こえなくなってしまったという、たいそう無粋な耳になってしまいました。
同じく中年オヤジの思い出話を長々とすいませんでした。
Y氏「そやろ!天空を駆け巡ってるみたいやろ!」
エム「ほ~せやからスカイ・ドッグってゆうんか?直訳したら空の犬か?(笑)」Y氏「よう解らんワ(笑)
ベッツのギターもええやろ」
エム「カントリーっぽいナ♪オサルノカゴヤフレーズやな(二人爆笑)
と、まあアホな会話を昨日のように思い出されます。
Y氏は4年前に病気で他界し、1曲目のStatesboro Bluesを聴くたびに青臭い昔の日々を懐かしんでしまいます(ノ_・。)
コメント、ありがとうございます。
全くの同感です♪
なにしろエリック・クラプトンに自信を喪失させた偉人ですからねぇ~、デュアン・オールマンは。
スライドでも、なんでも、骨太のブルース&ロック魂が充満しています。
しかもスライドで個性を出すのは難しくて、ライ・クーダーのシブイ味わいとか、ブライアン・ジョーンズを引き継いだようなローウェル・ジョージとか名人もいますが、やはりデュアン・オールマンが最高だと思います。
「イート・ア・ピーチ」に入っていた「One Way Out」も凄かったですよね。
コメント、ありがとうございます。
なかなか青春の1ページが熱いですねぇ。
「スカイドッグ」というニックネームは、ウィルソン・ピケットの命名らしいですよ。例の「ヘイ・ジュード」での両者熱演は素晴らしいかぎりですが、歌手のバックで光ってしまうのも、またデュアン・オールマンらしくて憎めません。
ボズ・スキャッグスとの共演、聴きたくなりました。
まぁ、長尺曲についてはマイルスのフィルモア盤で免疫が出来ていたはずなんですがね…。
拡大版CDなんかもよく聴きました。
しかし一度聴くと耳から離れないデュアンのギターには本当にシビレましたね。これを聴いたら他のギタリストは皆薄味に感じました。
いまではここぞというときにターンテーブルにのせ、楽しんでいます(今夜あたり聴きたくなりました)。
コメント、ありがとうございます。
うむ、確かに「ここ一番」の必聴盤ですよねっ!
デュアン・オールマンという名前が不滅になっているのも、全てはここから認識されたのが本当のところじゃないでしょうか。
LP片面の長尺といっても、今ではCD1枚の半分にも満たない時間なんですよねぇ。アナログ育ちの私達の世代では、それでも怖かったんですから、時代は変わるものです(笑)。