OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

それからのオールマンズ 其の弐

2011-03-01 12:04:44 | Allman Brothers Band

Wipe The Windows, Check The Oile, Dollar Gas
                         / The Allman Brothers Band (Capricone)

サザンロックが隆盛を極めた1976年末、忽然と発売されたオールマン・ブラザーズ・バンドの熱血ライプ盤!

と書きたいところなんですが、今となっては様々な裏事情を含んだ妥協の産物であり、またオールマンズが大衆的なトップスタアバンドに君臨していた所謂全盛期のドキュメントとして、いろんな楽しみ方が出来るアルバムだと思います。

 A-1 intrduction by Bill Graham ~ Wasted Words (1973年11月26日録音)
 A-2 Southbound (1973年11月26日録音)
 A-3 Ramblin' Man (1973年11月26日録音)
 B-1 In Memory Of Elizabeth Reed
(1973年11月26日録音)
 C-1 Ain't Wastin' Time No More (1972年12月31日録音)
 C-2 Come And Go Blues (1973年7月28日録音)
 C-3 Can't Lose What You Never Had (1975年10月22日録音)
 D-1 Don't Want You No More (1975年10月22日録音)
 D-2 It's Not My Cross To Bear (1975年10月22日録音)
 D-3 Jessica (1975年10月24日録音)

上記した演目とライプレコーディングのデータから、これはデュアン・オールマン(g) とベリー・オークリー(b) の突然の悲報からバンドが一念発起! 驚異的に大ヒットさせたアルバム「ブラザーズ&シスターズ」と倦怠の問題作「ウィン、ルーズ・オア・ドロウ」を売りまくった人気絶頂時の記録ですから、選び抜かれた各トラックの出来栄えが悪いはずはありません。

それはグレッグ・オールマン(vo,org,g)、ディッキー・ベッツ(vo,g)、チャック・リーヴェル(p,el-p)、ラマ・ウィリアムス(b)、ブッチ・トラックス(ds,per)、ジェイモー(ds,per) という6人が固い絆のプロ意識を堪能させてくれる名演集であり、しかも「In Memory Of Elizabeth Reed」以外は公式ライプ音源が初登場だったんですから、元祖ジャムバンドのひとつとしてライプステージを圧倒的に支持していた当時のファンには、充分すぎるプレゼントだったはずです。

まずは2枚組LPの最初のA&B面が、サンフランシスコにあったロックの殿堂「ウインターランド」での音源とあって、オールマンズも全くの手抜き無し! 蒸し暑いような鬱陶しさが快感の「Wasted Words」やサザンロック王道のグルーヴが炸裂する「Southbound」、そしてヒットシングル「Ramblin' Man」の軽快にドライヴしまくった歌と演奏は、其々が名演に恥じないものでしょう。

特にデッキー・ペッツは、もちろんデュアン・オールマンには及ばないものの、スライドギターには相当の頑張りが認められますし、十八番のカントリーリックを用いたアドリブソロも、それが「手癖」と言われる最高の褒め言葉に繋がる奮闘が良い感じ♪♪~♪

そしてチャック・リーヴェルの飛び跳ねてローリングするピアノ、粘っこいスワンプ風味がひとつの「芸」として確立されたグレッグ・オールマンの歌いっぷり、さらにリズム隊の重くて歯切れ良いリズムとビートの作り方!

それらが素晴らしいばかりの化学反応を起こして成立するサザンロックの醍醐味は、この時代を代表する「ロックの音」になっています。

しかし各トラックが分離しているというか、1曲終わる度に拍手歓声がフェードアウトするのは、ちょいと興を殺がれる感じが……。

まあ、このあたりはオールマンズが畢生の名演集として歴史に残した「アット・フィルモア・イースト」でさえ、そうなっていたのですから、納得するしかないのかもしれません。

ですからLP片面をぶっ通した「In Memory Of Elizabeth Reed」は流石に聴き応えがあり、しかも結論を先に言えば、とてもジャズっぽいんですねぇ~♪

それが良いのか否かは、まさに十人十色の好き嫌いでしょうが、本来がモードに展開される楽曲だと思いますので、浮遊感さえ表出させるチャック・リーヴェルのエレピやモダンジャズがモロ出しというデッキー・ペッツのバッキングは、明らかにデュアン・オールマン存命時の演奏、例えば前述した「アット・フィルモア・イースト」収録のバージョンと比較しても、かなり洗練されていると思います。

そしてサイケおやじは、ここでのバージョンが決して嫌いではありません。

というか、デュアン・オールマン在籍時のライプバージョンを全く聴いていなかったとしたら、身も心も虜にされる演奏だと思うほどです。

あえて比較すれば、ハードロックジャズなデュアン・オールマンのバージョンに対し、スペースジャズっぽいレアグルーヴな新生オールマンズ!? という感じですから、それは本来、比較しても次元が違うんじゃないか?

なぁ~んて、言い訳まで用意するほどなんですよねぇ~♪

その意味で「Don't Want You No More」に「It's Not My Cross To Bear」という、オールマンズのデビューアルバムからの演目が、デュアン・オールマン抜きのライプバージョンとして公式初披露されたのは興味深く、ブルースロックの基本は大切にしつつも、「お約束」のフレーズを多用して、どこかしらライトタッチに仕上げられたところに時の流れを感じたりします。

ただし同じ日の録音とされる「Can't Lose What You Never Had」は、原曲がマディ・ウォーターズのブルースヒットでありながら、オールマンズにとっては、当時ピカピカの新演目としての緊張感がレイドバックしたフィーリングを上手く中和され、個人的には前述した「ウィン、ルーズ・オア・ドロウ」収録のスタジオ録音バージョンよりも好ましい、決して悪くない感触を覚えます。

また、このアルバムで最も古い音源である「Ain't Wastin' Time No More」は、その淀んだブルース&カントリーな味わいがニクイほどですし、一説には60万人を集めたとされる伝説のロックフェスとなったワトキンスグレンのステージで録られた「 Come And Go Blues」は、タイバンがザ・バンドとデッドだった所為もあるんでしょうか、意図的とも思えるダラダラユルユルの雰囲気が、しぶとい! なんとなく初期のスティーリー・ダンじゃないか? という妄想が浮かんでしまうほどです。

そしてオーラスが人気インスト曲「Jessica」というも、実に用意周到ですよねぇ~♪ どこまでも果てしない快適なノリが持続していく、まさに終りの無いエクスタシーは当時のオールマンズ、中でもチャック・リーヴェルとリズム隊にとっては十八番の展開であり、そこに気分良く乗っかったディッキー・ベッツのギターが見事な快楽性を追求する様は、唯一無二のサザンロックフュージョンでしょうねぇ~~♪

いゃ~、本当に演奏時間の短さが勿体無いですっ!

そして既に述べたように、このアルバムの最大の弱点が、1曲毎にフェードアウトする拍手歓声で、つまりは収録トラックが分離しているので、その都度夢中で聴いていた狂熱に水がさされてしまう事でしょう。

また、それゆえに如何にも寄せ集めというお手軽な仕事が、何か虚しさを感じさせるのです。

つまり収められた演奏音源に対し、プログラムの流れをさらに重視した中で拍手や歓声が整えられ、各トラック毎の音質やバランスも統一した丁寧な編集が施されていれば、これは決定的な名盤になったと思います。

で、そんなこんなの気分に陥っていたリアルタイムのアルバム発売当時、驚愕のニュースが飛び込んできました。

それは、なんと、オールマンズの解散!?

しかも、このライプ盤は、その埋め合わせであったという……!?!

う~ん、その頃の衝撃度は、なにか物の分かったような心境になっていたサイケおやじにしても、決して小さくはありませんでした。

なによりも、サザンロックという流行が真っ盛りでしたし、フュージョンなんていう新手のジャズが注目されていた点に関しても、オールマンズは敢然と迎え撃つだけの音楽性と実力がありましたからねぇ……。

ただし、後になって知る当時のオールマンズの内部事情からは、納得せざるをえない共感を覚えたのです。

それは悪いクスリに絡むグレッグ・オールマンの人の道(?)に外れた行動でした。

ご存じのとおり、言いたくはありませんが、ミュージシャンと悪いクスリの関係は古くからあり、それによって命を縮めた天才も数多いるわけですが、それでも懲りないのが芸能界の悪しき伝統……。

おそらくはグレッグ・オールマンの場合、それが目に余ったのでしょうか、とにかく当局の捜査の対象となり、まずは本人が個人的に雇っていたローディのひとりが検挙され、次いでグレッグ・オールマンにも司直の手が伸びたのですが、ここはアメリカがお得意の司法取引を持ちかけられ、ついに法廷で証言する事との引き換えに免責を得たのですが……。

結局、それによって件のローディは、ほとんど終身刑に近い有罪となり、自らの保身の為に仲間を売ったグレッグ・オールマンはバンドメンバーやスタッフ、そして業界関係者ばかりか、多くのファンからも愛想をつかされ、もちろんオールマンズは解散となるのが当然の経緯でした。

そしてサイケおやじも、そうした内情を知った瞬間、このライプ盤が明らかに契約履行の産物であり、おそらくはレコード会社側がリードして作られたという推察さえ、容易でした。

今となってはオールマンズも和解(?)していますし、それぞれの道を歩みつつも、現在の伝統芸能路線をファンが満足して受け入れている現実の前では、このアルバムもそれなりに楽しく聴けると思います。なにしろリアルタイムでトップバンドに君臨していた黄金時代の記録ですからねぇ~。

文句なんて、バチアタリ!?

しかし、だからこそ、サイケおやじは言います。

どうか、この当時の音源の完全版を出して下さい!

もちろんブートやバンド側のオフィシャルサイトで売っているものもあるんですが、邦題が「熱風」と命名されたこのライプアルバムのコンプリートボックスが出たとしたら、絶対に買ってしまうファンが続出なのは確信しているのでした。

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