OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ハーブとロレイン

2007-09-09 18:08:32 | Weblog

本日から様々な意味で注目の大相撲秋場所が始りました。

高砂親方に対する罵声が大きかったですねぇ~。本人も苦しい表情でしたが、どうにもなりません。

そして初日から、ひとり横綱が負けるという波乱! これは波乱といっていいのか、当たり前なのか……?

そのあたりの曖昧さが、今の相撲協会にはお似合いでしょう。

ということで、本日は爽快なアルバムを――

Harb Geller Play (EmArcy)

昨日ご紹介した「テナーマン」でリーダーを務めていたのが、ドラマーのローレンス・マラブルでしたから、急に聴きたくなって、これを引っ張り出してきました。ジャズ的連鎖反応ってやつです。

ここでも地味ながら、良い仕事をしているんですねぇ♪

もちろん主役は白人アルトサックス奏者のハープ・ゲラーなんですが、溌剌として力強いリズム隊があってこその名演集になっています。

その内容は2つのセッションから構成されていますが、これは元々は10吋盤で出されていた同名アルバムを12吋LPに拡大して再発した時、新たな演奏を追加したのが真相です。

で、オリジナルセッションの録音は1954年8月6&9日、メンバーはハーブ・ゲラー(as)、ロレイン・ゲラー(p)、カーティス・カウンス(b)、ローンス・マラブル(ds) で、ハーブとロレインは夫婦という編成です。

また、もうひとつのセッションは1955年8月14日の録音で、ゲラー夫妻に加えてリロイ・ヴィネガー(b) とエルドリッチ・フリーマン(ds) が入っています――

A-1 Love Is Like A Turtle (1955年8月14日録音)
 いきなりハーブ・ゲラーの颯爽としたアルトサックスが炸裂するアップテンポのオリジナル曲です。そのスタイルは、もちろんチャーリー・パーカーの影響下にありながらも、それ以前の王道だったウィリー・スミスやベニー・カーターあたりの艶やかな音色と流麗な歌心を継承しているのですから、たまりません。
 一気呵成に駆け抜ける演奏全体のノリの良さは、同時代でもトップクラスの実力を証明しています。
 リズム隊も健闘していますが、ここはハーブ・ゲラーに引っぱられた雰囲気が結果オーライ! 3分に満たない演奏ですが、颯爽とした西海岸派の面目躍如たる仕上がりになっています。

A-2 Sweet Vinegar (1955年8月14日録音)
 これもハーブ・ゲラーのオリジナル曲ですが、今度はマイナー調でクールな雰囲気が滲み出たミディアムテンポの変則ブルース! まずリロイ・ヴィネガーのベースがリードして始るテーマ部分から、グッと惹き込まれます。
 あぁ、この思わせぶりな吹奏はアート・ペッパーを連想させられますが、あそこまでの愁いはありません。しかし独特の軽妙な味が素晴らしいですねぇ~♪ ロレイン・ゲラーのピアノもファンキーなところを狙いつつ、嫌らしくありませんし、実は主役というリロイ・ヴィネガーのペースが最高なのでした。

A-3 Sleigh Ride (1954年8月6&9日録音)
 ここからがオリジナル10吋盤の演奏で、まずは早いテンポでスマートなスタイルを披露するハーブ・ゲラーの持ち味が存分に楽しめます。
 それは相等に手の込んだフレーズも楽々とこなす実力の証明でありながら、決してサーカス吹奏になっていません。不思議な歌心があるんですねぇ~♪
 リズム隊では、やはりローレンス・マラブルが最高! 終盤でのドラムソロや全体でのビシッとしたシンバルワークは、ジャズそのものだと思います。

A-4 Slver Rain (1954年8月6&9日録音)
 ちょっと幻想的なハーブ・ゲラーのオリジナルですが、個人的にはあまり面白くありません。ただしロレイン・ゲラーが伴奏で良い味を出しまくりです。

A-5 Alone Together (1954年8月6&9日録音)
 有名なスタンダード曲ですが、これが素晴らしい! このアルバムの目玉演奏であり、数多い同曲の名演の中でも、特に素晴らしいバージョンになっていると思います。
 まず泣きながらテーマを吹奏していくハーブ・ゲラーが最高♪ ミディアムテンポで黒いグルーヴを生み出しているリズム隊も言う事無しです。
 もちろんアドリブパートに入っても、アグレッシブかつ繊細に泣きじゃくるハーブ・ゲラーは神憑りかもしれません。歌心と心情吐露が完全一致の大名演! あぁ、何度聴いてもシビレます♪
 この1曲だけで、このアルバムの存在価値があると断言致します!

A-6 Happy Go Lucky (1954年8月6&9日録音)
 如何にも西海岸派らしい楽しい演奏で、とにかくリズム隊の快調さは特筆物でしょう。
 ですからハーブ・ゲラーも細かいフレーズを織り込みながら、スラスラと吹き抜けていく痛快さ! ロレイン・ゲラーも楽しさ優先モードで夫婦付随の和やかさが、実に素敵な雰囲気なのでした。

B-1 Days I Never Knew (1955年8月14日録音)
 B面の最初の2曲は、A面と同じく追加されたセッションからの演奏で、もちろん素晴らしい出来栄えになっています。
 そして作曲したロレイン・ゲラーが本領発揮♪ バド・パウエルの影響下、如何にも女性らしい優雅な雰囲気も滲ませるピアノスタイルは本当に将来性豊かな魅力がありますが、残念ながら急逝しています……。
 またエルドリッチ・フリーマンがブラシ主体で素晴らしいドラムスを聞かせてくれますし、ハーブ・ゲラーの軽妙なスイング感も素晴らしく、これもアルバムの目玉演奏だと思います。

B-2 Domestic Harmony (1955年8月14日録音)
 ハーブ・ゲラーのオリジナル曲ですが、緩やかなテンポで???のテーマメロディが、どうも好みではありません。う~ん、何を狙っているのか……。
 もちろん艶やかなアルトサックスの音色は素敵なんですが……。

B-3 Breaking Through The Sound Barrier (1954年8月6&9日録音)
 ここからは再びオリジナルのセッションが聴かれます。そして前曲とは一転してハードバップな演奏が始れば、気分は爽快天国! 豪快なリズム隊に煽られて、思いっきりブッ飛ばすハーブ・ゲラーは破綻寸前のフレーズ展開がギリギリの寸止め状態!
 ロレイン・ゲラーも烈しくスイングしまくっていますし、ローレンス・マラブルのドラムソロも痛快です。そしてラストテーマの最後の最後では、綱渡りのスリルが楽しめますよ。

B-4 kahagon (1954年8月6&9日録音)
 前曲の流れを受け継いだような軽快なテーマメロディが素敵です。しかしリズム隊が重いので、そうは問屋が卸さないという感じでしょうか。ロレイン・ゲラーは引き続き絶好調のアドリブを聞かせてくれます。

B-5 You Stepped Out Of A Dream (1954年8月6&9日録音)
 有名スタンダートですが、ラテンビートも入れた猛烈に速いテンポの演奏に仕立てているあたりが、このバンドの恐さです。
 う~ん、こんなスピードでも破綻しないリズム隊の凄さ! ロレンン・ゲラーのアドリブも妥協していませんし、ハーブ・ゲラーは指が動いて止まらない状態でありながら、息が乱れないという、これも神憑りなんでしょうねぇ~♪
 もう、あまりにも早すぎて、和めないのが欠点でしょうか……。

B-6 A Room Wiht A View (1954年8月6&9日録音)
 と思っていたら、オーラスでは和みが全面に出たニクイ演奏を聞かせてくれます。楽しくスイングするリズム隊は最高ですし、全く出来すぎというハーブ・ゲラーは、上手すぎて逆に物足りないという贅沢を堪能させてくれるのでした。

ということで、軽くて爽快なモダンジャズの傑作盤です。ゲラー夫妻は当時、一緒にバンドを組んで人気が高かったそうですが、天は二物を与えずというか、美人ピアニストとして注目されていたロレインが1958年に夭折……。その後のハーブ・ゲラーは精神的ダメージから第一線を退いてしまいます。

しかし、そうした残念な結果も、このアルバムが残された事で癒されるような気がしています。ちなみに同じレーべルには、「ゲラーズ」と「セクステット」という通称三部作が残されており、いずれもゲラー夫妻による颯爽とした演奏が楽しめるのでした。

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