OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

神様を観た!

2006-05-22 17:56:39 | Weblog

最近、昼メシの弁当屋が、またまたサービスの大盤振る舞いで、トン汁はつく、サラダ・バイキングはやる、大盛も普通盛も値段はいっしょという、おいおい、儲かるのかね? と余計なお世話をやいてしまいますが、本日はそれを食いながら、幸せな映像・演奏に接しました――

Bud Powell In Europe (EFOR Films = DVD)

ガッツ~ンときました、このDVD!

私が敬愛する天才黒人ピアニストのバド・パウエルの貴重なライブ映像集です。大半は以前にLD化されたり、ブート・ビデオで出回っていたのですが、DVD化は今回が初めてでしょうし、公式発売は始めての映像も含まれています。

まず最初のセッションは1959年10月30日、パリのクラブ・サンジェルマンからのテレビショウ映像です。メンバーはクラーク・テリー(tp)、バルネ・ウィラン(ts)、バド・パウエル(p)、ピエール・ミシェロ(b)、ケニー・クラーク(ds) という米仏混成のモダンジャズ・バンドです――

01 Crossing The Channel
 最初はトリオでの演奏で、これはバド・パウエルの超人気盤「アメイジング第5集」のB面ド頭を飾っていたマイナー調の名曲です。ここでのパウエルは全く鍵盤を見ないで余裕の演奏、ケニー・クラークもブラシで快演です。

02 No Problem / 危険な関係
 ここでホーン隊が加わっての演奏は、デューク・ジョーダン(p) が映画「危険な関係」のテーマとして作った哀愁のハードバップ♪ こんな人気曲をパウエルがっ! と嬉しくなりますが、ここではバルネ・ウィランのテナーサックスばかりが活躍して、正直、物足りません。
 このあたりはテレビ放送用のライブということで、地元フランスの若手人気者にスポットを当てた企画なのでしょう。それでも全く物怖じせずに吹きまくるバルネ・ウィランは凄いと思います。

03 Pie Eye
 バド・パウエルがビバップの真髄を披露するイントロを弾き出せば、クラーク・テリーがそれを引き継いでアドリブに突進する、即興的な曲です。ここではケニー・クラークのブレイク的なドラムソロは挟んでバド・パウエルも短いながら出番がありますが、空ろな目つきが何とも言えません。

04 52nd Street Theme
 ビバップそのものというエキセントリックなテーマが提示された後、バルネ・ウィランが見事なキーワークで正統派の実力を発揮、その後はケニー・クラークとの丁々発止があり、ここではバド・パウエルも斬り込んでくるので、スリル満点です。
 しかし演奏時間が短いのが残念です。

05 Blues In The Closet
 再びリズム隊だけのトリオ演奏で、バド・パウエルは随所にセロニアス・モンク風のコードと装飾を入れながら、快調な演奏を聞かせます。もちろん鍵盤は全く見ていませんし、例の唸り声も微かに聞こえますが、画面ではバド・パウエルの口が動きっぱなしなので、あぁ、こうやって演奏していたのか! と謎解きの映像に興奮させられます。
 そしてベースのピエール・ミシェロも抜群のソロを披露しています。

06 Miguel's Party
 これも映画「危険な関係」からのハードバップ曲です。
 バド・パウエルの作り出すイントロは何時もながらに気持ちの良く、ホーン隊によるテーマ吹奏の後、まずクラーク・テリー、続いてバルネ・ウィランが王道の演奏を聞かせます。特にバルネ・ウィランは大張り切りですね♪
 肝心のバド・パウエルは、もう余裕としか言えない素晴らしさです。この時期の演奏はダメだとか評価されますが、そんなことは、この映像・演奏に接するとウソだということが、よく分かります。

以上は以前LD化されていた演奏ですが、やはり何度観ても良いですね♪

で、次のセッションは1959年12月のテレビショウで、場所はパリのブルーノート・クラブでのライブ、メンバーはラッキー・トンプソン(ts)、ジミー・ガーリー(g)、バド・パウエル(p)、ピエール・ミシェロ(b)、ケニー・クラーク(ds) です――

07 Get Happy
 リズム隊だけのトリオ演奏で、ビアノの前板が外してあるので、バド・パウエルの指使いがはっきり見えます。映像も二重・三重にメンバーの動きを重ねたりして変化があり、飽きません。
 肝心の演奏も快調そのもの♪ アップテンポでも全く鍵盤を見ないバド・パウエルは、ここでも同じで、圧倒されます。

08 John's Abbey
 これもバド・パウエルの代表的なオリジナル・ビバップ曲で、前曲以上に早いテンポで絶好調の演奏が披露されます。凄い!

09 Anthropology
 ここでテナー奏者のラッキー・トンプソンとギタリストのジミー・ガーリーが加わったジャムセッション! 演奏されるのはチャーリー・パーカー作の代表的なビバップ曲です。
 まずバド・パウエルが物凄い勢いでアドリブパートに突入するので、続くラッキー・トランプソンも必死です。この人はマイルス・デイビスの名作アルバム「ウォーキン(Prestige)」に参加してジャズ史に名前を残した名手ですが、ここでは、やや余裕が感じられず、残念です。というか、音色がフワフワしていて……。
 そしてギタリストのジミー・ガーリーはアメリカ人ながら欧州で活動していた隠れ名手♪ ここでも全く淀みの無いフレーズを弾きまくり! フッションも演奏スタイルもカッコ良い人ですねぇ~♪
 演奏はこの後、ラッキー・トンプソンとケニー・クラークのバトルになって盛り上がりますが、残念ながら、途中でフェイドアウトしています。

と、このセッションも以前にLD化されたものでした。

しかし次は公式発売されるのが恐らく初めての映像でしょう。録音は1962年初頭、メンバーはバド・パウエル(p)、ニールス・ペデルセン(b)、Jorn Elniff (ds) で、これもコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルからのテレビショウ映像ですが、これが物凄い! 観た瞬間、発狂しそうでした――

10 Anthropology
 アップテンポの演奏ですが、トリオの一体感は最高です。もちろんバド・パウエルがリードしているのですが、この時、若干15歳だったニールス・ペデルセンが、とてつもない神童だったことが確認出来ます。またドラムスの Jorn Elniff が白人ながら上手い人で、重くて歯切れの良いビートで演奏を盛り上げていくのです。
 そしてこの時のバド・パウエルは上機嫌というか、例の水野晴男に似た笑顔と全く鍵盤を見ずに弾きまくるその姿には感涙です。
 カメラワークと映像編集も抜群で、俯瞰から捕らえたバド・パウエル、指使いのツボを押さえた映し方、当日の客席の様子やメンバーの緊張感も完璧に撮影してあります。もちろんお客さんの美女のアップも、ありますよ♪

11 Around Midnight
 モダンジャズ永遠の名曲「ラウンド・ミットナイト」が、パウエルのクールにして壮絶な美学で彩られていきます。前述したようにカメラワークが最高なので、画面から目が離せず、さらに耳は演奏に釘付け状態! これを観ずしては死ねないのがジャズ者の宿命とでも言うべき、素晴らしすぎる演奏です。
 あぁ、生きていて良かった♪ と今日は心底思いましたねっ! ぜひともご覧いただきい、畢生の映像・演奏です。
 ちなみにこの頃のニールス・ペデルセンは先輩から、バド・パウエルは病気だから、もうレコードで聴けるような演奏は出来ないので安心しろ とアドバイスされたものの、実際に共演してみると、そのあまりに凄さにビビッたそうです。

ということで、これは絶対のオススメ映像集です。特に最後の2曲は悶絶必至! もしかしたら心臓麻痺を引起こすかもしれない、強烈さがあります。

繰り返しますがバド・パウエルの晩年はダメだなんて、流言蜚語にすぎません。こんな演奏に接することが出来た当時のファンは、本当の幸せ者です。

そして現代でこれが楽しめる我々もまた、幸せ者です。幸せになりましょう!

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