■ダンス天国 / Wilson Pickett (Atlantic / 日本グラモフォン)
「ダンス天国 / Land Of 1000 Dances」と言えばR&Bの代表的な名曲として、誰もが一度は耳にしたことがあろうかと思います。
特にキメとも言える「ナァ~、ナナナ、ナァ~♪」というスキャットシャウトは、これしかないの必殺技として覚え易く、しかも熱い黒人ビートが曲そのものから発散される構成はニクイばかり!
しかも我国では昭和40年代後半の一時期、ビートルズ以上の人気があったといって過言ではないウォーカー・ブラザースが歌って大ヒットさせていますから、尚更に刷り込まれている皆様が大勢いらっしゃるはずです。
ところがご存じのとおり、この「ダンス天国」は決してウォーカー・ブラザースのオリジナルヒットでは無く、本家本元はアメリカのニューオリンズを中心に活動していたクリス・ケナーという黒人歌手が自作自演していたものですし、世界的大ヒットになったのは、これまたアメリカの黒人歌手としては超大物だったウィルソン・ピケットによるシングルバージョンでした。
ただし、それが当時の日本では流行ったのか?
と問われれば、それは否でしょう。
なにしろ「ダンス天国」はウォーカー・ブラザースの人気演目になっていたのですからっ!
しかし一度でもウィルソン・ピケットの「ダンス天国」を聴いてしまえば、後は一気呵成に夢中になることは必定で、とにかくイントロの「ワン、ツー、スリ~~」というカウントシャウトだけで震えてしまいますよねぇ~~♪
実際、サイケおやじは当然ながらウォーカー・ブラザースのバージョンに出会い、その後は我国のGSやポップス系歌手が広く演目に入れていたおかけで「ダンス天国」には充分に免疫が出来ていたはずなんですが、それでも最初にウィルソン・ピケットの歌とシャウトを聴いた時には、筆舌に尽くし難い狂熱を感じました。
それはボーカルパートはもちろんの事、演奏そのもののハードでエグイ雰囲気が、当時としてはどんなハードロックよりも強烈に感じられた事も大きかったと思います。
特に中間部でドラムスの8ビートブレイクと共謀してシャウトしまくるウィルソン・ピケットの「ナァ~、ナナナ、ナァ~♪」は、まさに圧巻!
ちなみにウォーカー・ブラザースは、この部分をグループのコーラスハーモニーで表現していましたから、サイケおやじの耳には「ラァ~、ラララ、ラァ~♪」と聞こえていたんですが、やっぱり「ナァ~、ナナナ、ナァ~♪」が本物って感じです。
さらに咆哮するホーンセクションのアタックの強さ、あるいは妙にハズしたというか、今となってはシンコペイトしていると理解出来るギターリフ等々も独得の世界で、これはリアルタイムのロックはもちろんの事、モータウン系のノーザンピートでも無い、とにかく一味異なるノリが大きな魅力だったのです。
まあ、このあたりは同時期に作られ、日本でも大当たりしていたサム&デイヴやアレサ・フランクリン、そしてオーティス・レディング等々の南部ソウル物にも感じられるわけですが、ここでのウィルソン・ピケットは馬力優先主義!
もちろんウィルソン・ピケットの他の音源を後追いで聴いてみれば、実は「ダンス天国」のようなアップテンポのヒット曲は意外に少ないことに気がつくのですが、それゆえに迫力はケタ違いということなんでしょうか。
こうして本当に熱くさせられたサイケおやじが追々に集めていったウィルソン・ピケットのレコードの中には、ちょいと???という部分も無いではありませんが、少なくともアトランティック期の1960年代中頃から1970年代初頭までに吹き込まれた歌はソウルの塊ですよねぇ~~!
そのダイナミックなドライヴ感と野生の情熱で演じられるウィルソン・ピケット節は、スローでもアップテンポでも、全く手抜きの無いガチンコ勝負! 本当に生真面目に歌っていると思うんですが、それゆえに所謂サザンソウルの流行が下火になると本人も低迷してしまったのはちょいと残念……。
それでも前述したアトランティック期の音源はソウルの至宝である事に些かの変化もありませんっ!
最後になりましたが、その時期のレコーディングは当然ながらアメリカ南部のスタジオを使って制作され、それがメンフィスのスタックススタジオやアラバマのフェイムスタジオであった事を後に知ってみれば、そこでバックを演じていたのが白人青年中心だった真相に驚かされたのも鮮烈な記憶です。
告白すれば中高生時代のサイケおやじは、黒人R&B系の歌のバックは全てが黒人ミュージャンだと思い込んでいました。
それは例えば前述のウォーカー・ブラザース、あるいは我国GSのスパイダースが演じる「ダンス天国」が、どうやってもウィルソン・ピケットのバージョンに歌はもちろん、失礼ながら演奏パートそのものが負けているという現実を体験していたからです。
う~ん、やっぱり黒人じゃないと、こういうノリは出せないんだなぁ~!?
と独り納得していたところ、実はホワイトボーイがっ!?
そういう真実に触れるきっかけだったのが、オールマンズのデュアン・オールマンだった事は言うまでもありませんが、そのお話は別の機会に譲ります。
ということで、こういうガッツ溢れる歌と演奏を聴いていると、ヤル気が出ますねぇ~~♪
本日からは、かなり厄介な仕事も待ち受けているんですが、「ダンス天国」な気分でぶつかります!
コメント感謝です。
本当にウィルソン・ピケットの1970年代は凋落が激しくて……。
RCAと契約して作った諸作はがっかりしましたし、確かに来日した時も評判が良くありませんでしたねぇ。
しかし、アメリカでは相当にライブでの人気は高かったようですから、そういう音源の発掘も望まれますね。
1967年1月レコード買いました(このジャケットではありませんが)やはりバックの迫力もこのレコードの魅力ですね?
1970年代日本に来てテレビで見ましたが、
声が出なくてちょっとガッカリでした。
でもブルースブラザースの映画ではよかったです。