OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

退廃の美学の輝き

2011-05-15 16:26:16 | Rock

Children Of The Revolution c/w Jitterbug Love, Sunken Rags
                                                                                      / T. Rex (EMI / 東芝)

向かうところ敵無し!

という言い回しは滅多に使えるもんじゃありませんが、しかし1972年のTレックスは、まさにそれでした。

ご存じのとおり、Tレックスと言えばマーク・ボラン(vo,g) が中心であり、そのカリスマ性があればこそ、所謂グラムロックというブームも牽引出来たと思うのですが、しかし全盛期には二代目パートナーのミッキー・フィン(per)、スティーヴ・カーリー(b)、ビル・リジェンド(ds) からなるバンドとしての結束が大きな力になっていたはずです。

それはロックにおいてもテクニック偏重主義が罷り通っていた当時、シンプルなギターによるキャッチーなリフとブギのビートを主体とした温故知新のスタイルで大ヒットを連発し、併せてライプステージの熱狂も生々しく伝えられたことにより、決してキワモノバンドでは無いという評価が各方面で確かにあったのですから、いよいよ同年晩秋の来日公演が決定した時には、もう業界もファンも挙ってお祭り騒ぎの様相だったんですよっ!

そこで吉例の来日記念盤として発売されたのが、本日ご紹介の3曲入り徳用シングル♪♪~♪

まずはメインのA面「Children Of The Revolution」は、幾分鈍重なリフと分厚いストリングスが見事な化学変化を成し遂げた、これぞっ、グラムロックの代表曲! まさに退廃と快楽が同時進行しつつ、悪い予感にも満たされる唯一無二の感覚はリアルタイムで本当に新鮮でしたが、これにはプロデューサー兼アレンジャーとしてTレックスのブレイクに暗躍したトニー・ヴィスコンティの存在も大きかったんじゃないでしょうか?

特に不気味なフィーリングが冴えるストリングの使い方は圧倒的で、以降に関わるデイヴィッド・ボウイやシン・リジーとの仕事でも、その退廃的なムードの演出には流石の閃きを感じさせましたが、やはり原点となったのはマーク・ボランとの共同作業でしょう。

また、B面に収録された「Jitterbug Love」と「Sunken Rags」の2曲が従来路線の軽薄なR&Rブギのスタイルを受け継ぐマンネリだと言われても、その微温湯的な心地良さが独得の麻薬効果になっているところは侮れません。

ですから待望された来日公演が武道館で11月末と12月初頭に開催された時には、ギンギラギンの衣装と毒気に満ちたステージの雰囲気が優先されたらしいのですが、それでもきっちりとロックコンサートの掟は守られていたそうです。

と言うのも、実はサイケおやじはTレックスのライプには全く接した事が無いのですが、その時は折しもストーンズの幻となった初来日公演のチケット前売り騒動があって、青春ど真ん中のサイケおやじも参加した例の東急地下での徹夜行列には、なんとTレックスのコンサートが終了した後に並びに来た人達も大勢で、中にはストーンズよりもTレックスが最先端のカッコ良さ!?

そんな暴言を吐いた奴らも大きな顔をしていたんですから、如何に当時のTレックスの勢いが凄かったか、少しはご理解いただけるでしょうか。

もちろんサイケおやじは、そんな戯言を容認しているわけではありません。

しかしマーク・ボランは、確かにR&Rの荒野に登場したカリスマであり、不慮の事故で早世した事を差し引いても、本当の輝きを持ったスタアのひとりでした。

今日の歴史では、このシングル曲あたりを境にして急激な下降線を辿った人気という不可思議も印象深く、それを運命と決めつけるには、あまりにも眩しかったTレックスという存在の大きさは不滅だと思います。

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