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サイケおやじの生活と音楽

追悼・若松孝二監督

2012-10-18 15:05:13 | Movie

私をきつく抱きしめて / 路加奈子 (テイチク)

本日未明、友人からの連絡で、若松孝二監督の訃報に接しました。

ご存じのとおり、既に数日前、交通事故により入院を余儀なくされていたわけですが、重傷というだけで、特段生命には……、という報道でしたから、それはあまりにも突然……。

今、こうして文章を綴っていても、悲しみよりは混乱という気持の整理がつきません。

しかしサイケおやじは成人映画好きという性癖ゆえに、若松孝二監督作品はそれなりに観てきましたし、すっかり近年は社会派の巨匠という評価も、実は本質では無い云々、相当に不遜な心持でしたから、あらため故人の遺徳を偲び、ここに些かの思い出を記している次第です。

さて、そこで若松孝二監督と言えば、昭和40(1965)年の「情事の履歴書(若松プロ / 国映)」があまりにも有名であり、成人映画の枠を超えた高評は言うまでもありませんが、そこには当時としては奇蹟的とも言える興業収益の高さが、結果的にそれへ繋がっている側面もあるでしょう。

つまり実際に観ておらずとも、ヒットした大衆映画は時を経るにしたがって、尚更に名作や傑作と認められる事は一般常識に近くなっているはずです。

ところが若松孝二監督の作品は、もちろんヒット作は凄い仕上がりになっていますが、もっと広く評価されるべき良い仕事が多く、昭和40~50年代には名画座等々で度々特集が組まれ、また大学祭のイベントのひとつとして、人気作&隠れ名作が上映されていたのも、その証と思います。

で、そんな中でサイケおやじを驚愕させたのが、昭和38(1963)年に制作公開された「不倫のつぐない(日本シネマ)」という作品で、出演女優のひとりが本日掲載のシングル盤を吹き込んだ路加奈子(みちかなこ)でした。

物語は浮気な人妻が情事の帰り道に轢き逃げをやった事から、妙な男に脅迫され、暴行監禁やレイプという展開だったんですが、そこで描写される暴力シーンのリアルな迫力は、そのまんまレイプ&セックスの生々しさに直結するエグ味が強烈至極!

特に海辺の波打ち際で繰り広げられる強姦シーンは、和服姿の路加奈子が海水でズブ濡れになって犯され、押し倒されては殴られるという激しさで、サイケおやじの全身の血液が逆流沸騰させられた劣情の記憶は、今も鮮烈です。

しかも、おそらくは寒い季節であった思われる現場での彼女の演技の熱烈さは、若松孝二監督の容赦無い演出と抉るようなカメラワークが相まって、それは凄味さえ感じられるものでした。

そして同時に強く表出していたのが、路加奈子の女優としての本質で、実は彼女は日活の大部屋所属ながら、イタリア系の血が入った妖艶な正統派美女という魅力が全開♪♪~♪

グラマーで色っぽく、しかし何処かしら清楚な佇まいの彼女が暴行される時、着物の裾から艶めかしい太股が露出するシーンは、モロ見えで無くとも、激しい興奮を喚起させられ、他にもちょいとした仕草で滲み出る成熟した女性の存在感がエロいんですねぇ~♪

ご存じのとおり、路加奈子は当時の若松孝二監督のお気に入り女優として、様々な作品に出演していますが、そこでの好演が人気を呼び、ついには武智鉄二監督の超話題作「白昼夢(昭和39年・第三プロ / 松竹)」に主演して世間を騒がせたのもムペなるかなです。

そして告白すると、サイケおやじは、この「不倫のつぐない」に接するまで、喧伝されていた若松孝二監督の素晴らしさがイマイチ分からず、もちろんそれまでに他の作品十数本は鑑賞していたのですが、どうにも自分には……。

う~ん、このあたりは全く不遜な戯言ではありますが、逆に言えば、それだけ「不倫のつぐない」という作品、そして路加奈子という女優さんが、サイケおやじの感性にジャストミートしていたのでしょう。

ちなみに後追いで観た若松孝二監督作品の中では、「赤い犯行(昭和39年・日本シネマ)」での路加奈子も相当に熱い演技を披露していますよ♪♪~♪

そして以降、サイケおやじの若松孝二監督作品に対する観方が変化した事は言うまでもありません。

中でも凄いなぁ~~、と何時も感心させられるのがカメラワークのエグ味で、当然ながらモロ見えどころか、出演者の腰の動きや表情にまでも映倫の厳しい審査が行われていた時代において、ギリギリ加減と斬新な捕らえ方によるエロスの表現は、理屈を超越したストレートな感覚として、スクリーンを凝視する者のスケベ心を直撃してくるのです。

これは成人映画の世界では、監督の立場でありながら、逸早く自分の制作プロダクション=若松プロを立ち上げた成果というか、メインの撮影カメラマンが盟友とも言える伊東英男であったことも、常に意志の統一が図れた点かと思います。

また、それゆえに現場での若松孝二監督の演出は、さらに辛辣果敢であったのでしょう。

伝説(?)も数多いわけですが、レイプシーンでの女優さんに対する仕打ちはSMまがいであったとか、放尿シーンは本物ばかりだったとか、とにかく半端無いエネルギッシュな感覚は、しっかりと残されたフィルムに焼きつけられているはずです。

それらについては、今更サイケおやじがクドクドと述べる必要もない事は自覚しておりますが、個人的には密室でのSMに拘った「胎児が密漁する時(昭和41年・若松プロ)」は忘れられません。

それと故人の履歴には何かと錯綜する過去があったようで、おそらく今後、マスコミで様々に虚実入れ乱れた報道があるでしょう。

ただし、人間は過去なんか、ど~でもいいという真実が確かにあるはずです。

そりゃ~、若松孝二監督が家出少年からチンピラになって、何時しか映画関係の下働きをするようになり、名匠・小林悟監督の弟子として修業を重ね、様々な現場を経た後の昭和38(1963)年に初監督作品「甘い罠」を自らの制作プロを立ち上げて撮ったという経緯は、立志伝中の人物に成り得るものでしょう。

そして同時にチンピラ時代の留置場体験、自ら指揮する撮影現場における俳優事故死騒動、大島渚監督のメガヒット問題作「愛のコリーダ」の実質的な制作等々、やはり反権力・反体制の意思を貫く姿勢も、サイケおやじは尊敬するところです。

ちなみに「愛のコリーダ」のメインカメラも前述した伊藤英男なんですよっ!

ということで、若松孝二監督については、いくら書いても、これで終わりという事はありません。

しかし、今日はここまで……。ひたすらに合掌です。

最後になりましたが、掲載した路加奈子のシングル盤は件の主演映画「白昼夢」の主題歌扱いなんですが、劇中の彼女が歌手役であった事を活かした企画物として、昭和39(1964)年に発売されたものです。

残念ながらというか、当然ではありますが、狙いは「お色気レコード」ですから、一般的なヒットになっていません。

それでも作詞:松島敬之、作編曲:牧野昭一による「私をきつく抱きしめて」は、なかなか良いムードが堪能出来ますよ。

ただし、やっぱり路加奈子は、動いている姿が最高で、腋毛女優としても有名なひとりでしたから、サイケおやじは大好きでした。

あぁ、もう一度、「不倫のつぐない」が観たい……。

そして若松孝二監督、永遠なれ! 合掌。

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2 コメント

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音はこれしか (毎日がYukiYuki)
2012-10-19 09:09:33
コメントするのは久しぶりです。
音を探したのですが、これしかありませんでした。
http://www.teichiku.co.jp/catalog/teichiku/2012/ch25285.html
これだけでも相当色っぽいですね。
昔こういう色気のあるCDに凝ったことがあるので、久しぶりの感覚でした。
谷ナオミ・應蘭芳・池玲子があります。
返信する
イメージ (サイケおやじ)
2012-10-19 15:58:09
☆毎日がYukiYuki様
コメント&ご紹介、ありがとうございます。

往年のお色気レコードは、やっぱり楽しいですよ。
今はほとんど作られないし、また作られるべき人材も不足しているのでしょうねぇ。
尤も現在はイメージビデオがありますけど(微笑)。
その意味で当時のスタア女優さんがイメージ作品を作っていたら、なぁ~んて想像するのも楽しいです♪
返信する

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