OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

イエスのライブの裸の神業

2016-02-21 15:00:49 | Rock Jazz

Progeny : Highlights From Seventy-Two / Yes (Atrantic / Rhino)

すっかり定着した大物ミュージシャンのアーカイヴ商法は、それに賛否両論があろうとも、やはり自分の好きなバンドや歌手の音源であれば、思わず手を出してしまうのがサイケおやじの本性です。

ただし、「賛否両論」と書いたのは、時としてそれがあまりにも長大な内容、つまり結果的に高額な商品になっている現状を目の当たりにすれば、闇雲な賛同推奨は出来ない事も確かな真実だと思います。

それは最近入手した中でも、例えばグレイトフル・デッドのCD80組から成るライブ名演集とか、ボブ・ディランのレコーディングセッション記録集とか、果たして入手はしたものの、自分の生涯に全てを聴き終えることが可能なのか?

というようなブツがありますからねぇ~~。もう、それは明らかに高齢者への冥途の土産としか思えないわけですよ……。

ところが流石に制作側も良心(?)が働くのか、人気の高いミュージシャンの対象物件には、ちゃ~んとダイジェスト&ハイライト盤が出されていまして、本日ご紹介のイエスの2枚組CDは、1972年秋のアメリカ巡業から7カ所の公演を14枚のCDに収めた箱物「プロジェニー」から、出来の良いテイクを抜粋し、ひとつのコンサートライブを楽しめるように作られた編集アルバムになっています。

☆DISC 1
 01 Opening (Excerpt From Firebird Suite) ~ Siberian Khatru (1972年11月20日録音)
 02 I've Seen All Good People (1972年11月15日録音)
 03 Heart Of The Sunrise / 燃える朝やけ (1972年11月15日録音?)
 04 Clap ~ Mood For A Day (1972年11月12日録音)
 05 And You And I / 同志 (1972年11月11日録音)
☆DISC 2
 01 Close To The Edge / 危機 (1972年11月11日録音)
 02 Excerpts From "The Six Wives Of Henry VIII" / ヘンリー八世の6人の妻 (1972年11月12日録音)
 03 Roundabout (1972年10月31日録音)
 04 Yours Is No Disgrace (1972年11月12日録音)

で、収録の演目は上記のとおりで、説明不要かもしれませんが、この発掘音源は1973年に出されたLP3枚組の超絶ライブアルバム「イエス・ソングス」の主要な根幹という真相があり、とすれば前述の14枚CDに収録された何れの公演も完璧な名演ばかり!

と思いきや、実際にサイケおやじが件の箱物をゲットして、ほぼ連日同じプログラムを繰り返していたイエスの実相、つまりはその時々の好不調の波に接した事で、あぁ……、彼等にしても一発勝負のライブの現場は思いどおりにはならないんだなぁ~~~!?

という、本当に不遜な思いが湧きあがって……。

結論から言うと、完璧だった「イエス・ソングス」の収録各トラックには、それなりにパートの差し替えや編集が施されていたという、当たり前ながらも、本音では信じたくない現実があったのです。

逆に言えば、14枚組の「プロジェニー」には、ネイキッドなイエスが記録されたという事なのでしょう。

実際、そこには声が苦しくなっているボーカル&コーラスパート、リズムコンビネーションが破綻寸前の演奏パート等々に加えて、個人技のミスやPAあるいは録音機材の不調といったトラブルまでもが如実に出てしまっているところさえあるんですから、今となっては神話の崩壊とまでは申しませんが、イエスも人間集団であったという証拠物件(?)でありましょうか。

しかし、このハイライト盤「プロジェニー」は既に述べたとおり、選び抜かれたトラックで編まれた、所謂「アナザー・イエス・ソングス」であり、CD2枚でコ当時のコンサートライブを追体験出来る、とても嬉しいプレゼントにちがいありません。

ちなみにここでのイエスはジョン・アンダーソン(vo,per)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、リック・ウェィクマン(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、アラン・ホワイト(ds,per) という、所謂黄金期の顔ぶれ♪♪~♪

そして初っ端、開演を待つ観客のざわめきの中、ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」からの抜粋がテープによって流され、そこに登場したメンバーがチューニングやマイクのテスト等々を行うという段取りの部分が非常にリアルで、これから始まるライブショウの幕開けには必須のワクワク感♪♪~♪ それに浸る間もなく始まる「Siberian Khatru」の豪快な演奏だけで、あまりの凄さに我を忘れてしまいますよ♪♪~♪ なにしろ本来がリズム重視のイケイケな曲という側面があるにしろ、非常にシバリの多い構成展開はプレイヤー各々に神業級のテクニックが求められるわけですからねぇ~~。それがここではヘヴィ&シンプルに暴れるアラン・ホワイトのドラミングは言わずもがな、殊更終盤で圧巻のソロを披露するスティーヴ・ハウ、執拗に様式美を守ろうと奮闘するリック・ウェィクマン、投げやりな感じが逆に素晴らしいクリス・スクワイア、そしてジョン・アンダーソンが主導するボーカル&コーラスの痛快さ! こんなアンサンブルをやってしまうイエスは、やっぱり好き♪♪~♪

と、サイケおやじは本気で愛の告白です。

それは続く「I've Seen All Good People」においても同様で、ボーカル&コーラス主体の前半では些かジョン・アンダーソンの声に不調が感じられるものの、後半のハードロックなパートに突入するや、ドカドカ煩いアラン・ホワイトのドラミングに煽られたかのようにノリノリのスティーヴ・ハウは、このハイライト盤に収録のテイク以外の他日の演奏では羽目を外しすぎて、アンサンブルが乱れる元凶になっているほど!?

いゃ~~、熱いなぁ~~~♪

また、如何にもキング・クリムゾンっぼい「Heart Of The Sunrise / 燃える朝やけ」にしても、これだけ複雑な転調と変拍子の嵐という曲展開が決してアドリブだけじゃ~ない、そのきっちりと最初っから組み立てられた様式美に沿っているという「鉄の規律」は、イエスだからこそ実演可能という証明が、このライブバージョンの恐ろしさかもしれません。

ただし、前記した収録演目に注釈として加えた録音年月日がジャケットに記載されたまんまとは言え、しかもこの「プロジェニー」がネイキッドをウリにしていながら、本家本元の14枚組の同日テイクとは、このハイライト盤に収録のテイクは異なっている印象であり、もしかしたら、やっぱり編集が!?

このあたりは、さらに聴き込みが必要なところでしょうが、それはそれとして、ファンにとっては一番(?)に気になりましょうスティーヴ・ハウの独演会「Clap / Mood For A Day」が、全く期待を裏切らないんですから、たまりません♪♪~♪ 何故ならば「Clap」は初出となった「サード・アルバム」からしてライブバージョンであった所為か、肝心の「イエス・ソングス」には未収録でしたからねぇ~~~。 ここではさらにワイルドなフィーリングが付加され、続く「Mood For A Day」の分かり易さ共々に和みの時間は大切でしょう。

あぁ~、こ~ゆ~アコギが弾けたらねぇ~~~~♪ 

等々と思いつつ、いよいよ前半の区切りに置かれた「And You And I / 同志」が始まれば、その大仰な威圧感に満ちたイントロと思わせぶりなメロディ展開は、瞬時にサイケおやじをイエスの世界そのものへとワープさせてくれるんですねぇ~~♪ 美意識に彩られたアンサンブルの中において、ライブの現場では意外と地味な印象だったクリス・スクワイアのベースワークが小技にも細かい留意点がある事は目からウロコでもあります。

その意味でスティーヴ・ハウが12弦&スティールギターまでも駆使する八面六臂の大活躍ならば、もうひとりの看板であるリック・ウェィクマンは落ち着いたプレイで好印象♪♪~♪

こうして2枚目のディスクへと聴き進めれば、当時の最新アルバムだった「危機」からのタイトル曲が、見事に四分割されたパートを組み立てるという、まさに組曲形式の極みがロックでもやれるっ! その実証作業が凄いですよっ!

もちろんフルスピードからタメを効かせた粘りのプレイまで全開のスティーヴ・ハウ、どんな場面でもビートの芯を外さないアラン・ホワイト、しぶとさも感じさせるジョン・アンダーソンも大健闘ですし、部分的にアンサンブルが破綻寸前のところも上手くフォローするクリス・スクワイアの存在も侮れません。

ただし、どうにもストレスを発散させたい願望が滲むように聴こえる瞬間もあるリック・ウェィクマンのプレイは、個人的に???

ですから、まさに本人が独壇場となる「Excerpts From "The Six Wives Of Henry VIII" / ヘンリー八世の6人の妻」が、このハイライト盤で試行錯誤と破天荒の危ういバランスで成り立っている感があるのは、賛否両論と言うよりは、ライブステージならではのスリルと思ったほうが気は楽じゃ~ないでしょうか。

そして最後の瞬間から、そのまんま、すうぅぅぅ~と「Roundabout」の印象的なイントロに繋がっていく心地良さは絶品! 当然ながら収録日の異なる両テイクの実相からすれば、まさに上手い編集の結果はオ~ライ♪♪~♪

いゃ~、やっぱりこの「Roundabout」は好きだなぁ~~♪ 複雑なバンドアンサンブルも楽々と演じてしまうイエスでなければ、ライブでやって恥を売ってしまいそうな曲だと思えばこそ、ひたすら荒野を目指すが如きバンドの勢いは最高潮としか思えませんし、「静」と「動」の対比が重要なアクセントとなっているキメのパートからリック・ウェィクマン対スティーヴ・ハウのソロの応酬、さらには眩暈のリフの連なりも含めて、これがウケなきゃ~、プログレの神様は慈悲もない存在でしょうねぇ~~~。

そしていよいよの大団円が、おそらくはアンコールという事になるのでしょうか、イントロからリック・ウェィクマンのリラックスしたロックピアノが楽しさを導き出す「Yours Is No Disgrace」こそが、まさにリアルタイムの人気バンドならではの余裕と貫録と言ってしまえばミもフタもなんとやら!? 何時しか突入している、あのお馴染の血沸き肉躍るリフの高揚感には実にシビレますよ♪♪~♪

ということで、なかなか楽しめるアルバムではありますが、イエスというプログレを代表する人気バンドをもっと深く愛するためには、ミスもトラブルも隠しようが無かった前述の14枚組を聴くのが本当のところでしょう。

しかし、それで全てのファンの「愛が冷めない」という保証は、どこにもありません。

その点、本日ご紹介のハイライト盤は、程好い荒っぽさがロックの本質に迫っている瞬間も多々あり、時として「頭でっかち」と揶揄される事さえあるプログレというジャンルの宿業を見事に大衆音楽の王道へと変換させた裏傑作かもしれません。

ちなみにサイケおやじは、件の14枚組ボックスも、このハイライト盤も、国内盤に比べれば、ずう~っと安い輸入盤でゲットしましたから、特に解説書の和訳等々を必要としなければ、それでも満足度は高いはずと思います。

最後になりましたが、やっぱりスティーヴ・ハウって、物凄いギタリスト!

それを再認識させられた事を付け加えさせていただきます。

あぁ、絶句……。

コメント (2)
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