■なぎさの誓い / The Tymes (Parkway / 日本ビクター)
所謂オールディズの定義のひとつに、古くても良い歌、良いメロディーという条件があるとすれば、サイケおやじにとってのオールディズの中には必ずや常備されるのが、本日掲載シングル盤A面曲「なぎさの誓い / So Much In Love」です。
今となっては、この1963年に大ヒットしたタイムズのオリジナルバージョンよりも、1982年に某映画のサントラ扱いでリバイバルヒットした、元ポコ~イーグルスのティモシー・シュミットのカパーバージョンが良く知られるところかもしれませんが、それも「なぎさの誓い / So Much In Love」が基本的に持っている、胸キュンにしてハートウォームなメロディがあればこそっ!
本当に何時聴いても、琴線に触れまくりの泣きメロが素敵なんですよねぇ~♪
ちなみに件のタイムズは、アメリカのフィラデルフィア周辺で活動していた黒人コーラスグループなんですが、黒っぽさよりは黒人芸能ならではの粋な甘さを得意技にしていたようで、マニア用語では「甘茶」に属する魅力と白人にも自然に馴染めるポップスフィーリングがウケた要因かと思います。
メンバーはリードを歌うジョージ・ウィリアムス、アルバート・ベリー、ジョージ・ヒリアード、ノーマン・バーネット、ドナルド・バンクスを当時のレギューとする5人組なんですが、この「なぎさの誓い / So Much In Love」を作曲したのはジョージ・ウィリアムスということで、自作自演の気持が入ったボーカル&コーラスにも納得されるものがありました。
そして同時に特筆するべきは、レコード化されたシングルバージョンには波の音がSEとして用いられている事で、邦題「なぎさの誓い」はそこからの連想と思わざるを得ません♪♪~♪
これはレコーディングプロデューサーのビリー・ジャクソン、そしてアレンジャーのロイ・ストレイジスの合作アイディアらしく、楽曲クレジットも彼等3人の名義になっているのは、如何にも音楽産業の舞台裏が興味深いところですし、アメリカのヒットチャートでは堂々のトップに輝いたのもムペなるかな、今日ではスタンダードの人気曲になっているのは言わずもがなです。
ただし、タイムズにとっては、実はこれが特大のヒットになり過ぎたわけでして、一応は1964年までに2~3曲ほどをチャートインさせたものの、後は泣かず飛ばず……。
ところがタイムズは冒頭に述べたとおり、フィラデルフィアで活動していた人脈を活かし、そうした暗黒時代(?)に自らのレーベルを立ち上げ、そこで地道に制作していた諸々のレコードには、後に世界を席巻する「フィリーソウル」の礎的な感触が記録されているのですから、侮れません。
特に1974年の「You Litlle Trustmaker」の大ヒットによる復活は、件の「フィリーソウル」の世界的なブームと重なったことで、実は既にRCAに移籍していたとはいえ、タイムズの魅力を再認識させた実力は流石と思います。
ということで、そのあたりの「フィリーソウル」のあれこれについてを追々に書いていきたいと目論んでおりまして、その端緒のひとつとして本日はタイムズを取り上げてみました。
素敵な音楽は時を超えて、リスナーの心を揺さぶる真実を痛感している次第ですが、この「なぎさの誓い / So Much In Love」は黒人R&Bやソウルミュージックに分類するのがバカらしくなるほどの普遍的な存在として、大衆音楽の典型なのかもしれません。