OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

実は穏やかなニール・ヤングが好き

2014-02-18 14:57:02 | Singer Song Writer

風は激しく / Neil Young (Reprise / ワーナーパイオニア)

1960年代半ばから今日まで、相当に長い間活動を続けているニール・ヤングは、その強烈な個性ゆえなのでしょうか、どこかしら常にファンや周囲の期待とズレたレコードを作ってしまうという前科前歴を繰り返しているように思います。

例えば決定的なブレイクとなった1970年発売の大傑作「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」、それに続く1972年の人気作「ハーヴェスト」の2枚のLPこそが、ニール・ヤングのシンガーソングライターとしてのイメージだとしたら、その路線を発展継承してくれるのがスタアの王道でしょう。

ところがニール・ヤングは、あっさりとそれを捨てたかのように、意味不明の映画サントラ盤「過去への旅路」を筆頭に、新曲ばかりの粗雑なライプアルバム「時は消え去りて」、暗いイメージの「渚にて」、紆余曲折での発売延期から、やっとこ世に出た酔払いライプドキュメント「今宵その夜」と続いた、所謂暗黒期のLP群は、コアなファンにとっては宝物でも、普通にアメリカンロックを聴いていたサイケおやじには、その悲痛な情念だけが……。

しかし、そこから脱して、急に前向きな姿勢を旗幟鮮明にした「ズマ」なぁ~んていうアルバムが出てみれば、それは如何にも「らしくない」と思ってしまうんですから、サイケおやじのニール・ヤング感は我儘です。

告白すれば、そういう思いがあったからこそ、件のリアルタイムだった1975年になって、ようやく中古盤ながら、ニール・ヤングのそれまでのリーダーアルバムをきっちり揃えたのがサイケおやじの立場なんですよ。

さて、そこで本日掲載のシングル盤は、1978年に発売されたニール・ヤング久々の大衆ヒットアルバム「カムズ・ア・タイム」からのカット2曲を両面に収めたものなんですが、特筆すべきはA面「風は激しく / Four Strong Winds」が本人のオリジナルではなく、同郷カナダ出身のフォークデュオとして有名なイアン&シルヴィアのヒット曲カバーという真実がミソ!?!

些か確信犯的な書き方になりますが、前述のアルバム「カムズ・ア・タイム」が売れまくったのは、フォーク&カントリーとでも申しましょうか、全篇が和みの音楽スタイルで纏められているところから、ニール・ヤングが持前の「泣き節」を屈託なく聞かせてくれるのに加え、お気に入りの新進女性シンガーだったニコレット・ラーソンを全面的に参加させ、それはコーラスばかりか、ほとんどデュオ相手としての起用が目立つという、なかなかハートウォームな仕上げが結果オーライということでしょう。

ですから、「風は激しく / Four Strong Winds」にしても、如何にもカバーバージョンという体裁以上のナイスフィーリングがたまりません♪♪~♪

ご存じのとおり、この歌は季節労働者の過酷な現実を描いているんですが、ニール&ニコレッタが提供してくれるホンワカムードは、歌詞の中身が率直に理解出来ない我々日本人には、何の問題もないはずです。

むしろ、そういう真相を知ってみれば、また別の感慨も……、と言うべきかもしれません。

ただしニール・ヤング本来の魅力のひとつが、あの心情吐露型のボーカルと強引なヘタウマエレギギター、そしてシンプルなアコースティックギターの弾き語りによる繊細な本音の歌である事も、また確かでしょう。

ですから、あまりにも明るい雰囲気は似合わないという先入観念が、ど~してもニール・ヤングには「つきまとう」のですが、個人的にはニール・ヤングは決してネクラでは無いと思いますし、むしろ全てに肯定的なロック性感度の高さが永遠の人気の秘密!?!

そして両方のバランス感覚の振幅の大きさも侮れない魅了であります。

それは書き遅れてしまいましたが、この「風は激しく / Four Strong Winds」を含むアルバム「カムズ・ア・タイム」がヒットする直前には、例のスティーヴン・スティルスとの挫けた共演作品「太陽への旅路」や没テイクを集めたとしか思えない些か中途半端な「アメリカン・スターズン・バーズ」という2枚のLPが賛否両論で、局地的にはニール・ヤング限界論もあったとか!?

その意味では面白いニール・ヤングの音楽人生を辿る時、「カムズ・ア・タイムというアルバムに刻まれた穏やかな世界が、案外と有用なんでしょうか?

今となっては以降のにール・ヤングが所謂パンクやグランジの元祖とされる激烈な歌と演奏を遣り抜き、しかし一方ではテクノやロカビリーにも手を出し、さらにはジャズブルースっぽいレコードまでも出すという、節操の無さが結果としての存在感の強さになっているのは、皮肉かもしれません。

ということで、あらためて本音を述べれば、サイケおやじは穏やかモードのニール・ヤングが一番好きです。つまりそこからどちら側に振れるのかが、興味の大きな対象なんですよ。

そして最後になりましたが、このシングル盤をあえてゲットしたのは、既に皆様ご推察のとおり、A面収録の「風は激しく / Four Strong Winds」のミックスが微妙にアルバム収録の同曲と異なり、ニール・ヤングとデュエットするニコレッタ・ラーソンのボーカルが大きく聞こえるからなんですが、どうやらそれはサイケおやじの思い込みのような気も……。

それも結局はアナログ盤7吋シングル特有の「45回転の魔法」なのかもしれません。

そして穏やかなニール・ヤングについては、これからも追々に書いていく所存なので、よろしくお願い致します。

コメント
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